枯れ枝に光る氷花

 そらさん、昨日の写真でごく薄く知床の山が写っているのが3枚あるのですが、気づきましたか。青い空と海、
 
白い海氷、くっきり浮かぶ山々、ぜんぶそろうとよかったのですが。執念深いので、3月末まで流氷が居残ってく
 
れたら、去り際に実現するかもしれないという期待を捨てていません。
 
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 エジプトの政変で犠牲者がさらに増えるという状況が止まって、まずは少しほっとしています。報道を追いなが
 
ら、国家というまとまりがこれからどうなっていくのか、考えさせられました。生業の中心が自然経済から食料生
 
産に移行すると、互いに顔見知りという範囲を超える大きな集団ができ、やがて国家に発展します。そして個人
 
は富や地位を競うようになり、国家は領域拡大と他国に勝る国力を追求します。
 
 自然経済が終わって、見知らぬ人々の間の分業と交換に支えられる社会になった以上、膨大な数の他人を秩
 
序ある形で結びつけるシステムなしで済ますことはできません。この1万2千年間ずっと、分散性に抗してどうや
 
って求心性を生み出すか、さまざまな模索がありました。
 
 絶対神を戴く宗教は求心性を産む一番古いシステムです。その威力は現在も残っています。イスラム国家だ
 
けでなく、アメリカでも神を信じないと言えばきっと大統領にはなれません。日本でもまだ天皇制廃止を言ったら
 
首相にはなれないでしょう。ロシアや中国は、宗教による国民統合を否定した比較的新しい歴史をもつので、生
 
身をむき出した人による専制への傾斜を振り払えずにいます。北朝鮮は聖化される家族を新たに生み出そうとし
 
ているようです。
 
 古代ギリシャにはいくつか直接民主制を試行したポリスがありました。しかし長期間の安定を作るシステムとし
 
て洗練されることなく、けっきょく僭主、寡頭専制、王、皇帝などに翻弄されます。アリストテレスは賢人政治の観
 
念にとらわれ、その弟子のアレキサンダーは自分のカリスマ性にもとづく専制で、世界の三分の一近くを征服し
 
ます。しかしその統合は作り出せませんでした。
 
 中世は身分制社会でした。そしてその後を襲った近代市民社会は議会民主制を採用します。選挙で選ばれる
 
のは、財力・社会的組織における地位・名声などで一般人に勝る立場を確立した者かその代理人です。比較的
 
早く議会民主制を採用した国々で、いまは彼らの統治に対し、無名市民からの不定形な不信が湧き上がる状況
 
です。無名市民の不信は不定形ですから、分散性を強める作用があります。
 
 エジプトの人々は既成専制政府の排除には成功しました。しかしイスラム勢力、野党政治家、ネットでデモを
 
呼びかけた無名市民のいずれも、それに代わる求心性はもっていません。いまは軍が秩序を担っています。こ
 
れからどうなっていくのかは、市民社会の形成が遅れた国の特殊な例というだけでなく、現代国家制度の行方に
 
かかわる新しい芽も含んでいるような気がしています。