海鳥の大群 今を生きる
くすると、アサリを採る人の群が鳥たちに代わって浅瀬を占領し、湖岸道の片側が駐車した車で一杯にな
ります。
きのうはマリナーズの試合を堪能しました。４－２でリードされていた７回にイチローのタイムリーで
一点を返し、９回裏に城島のソロで追いつきます。その後双方無得点のまま１３回まで進み、３点を取ら
れたときにはこれまでと思ったのですが、その裏にイチローのヒットなどでまた同点とし、１５回裏にロ
ペスのさよならヒットでようやく決着がつきました。マリナーズは登録投手全員を使い切り、この後どう
するのかと気が気でなくなっていたときです。５時間を越す今年のＭＬＢ最長時間ゲームでした。
わたしは若いころスポーツを見て楽しむ習慣がありませんでした。生活がだいじなのに、人々の日常へ
の不満を逸れさせる麻薬みたいなものという、反感さえ抱いていました。いまはこの考えが間違っていた
ことがわかります。
凍えた体にはぬくもりが快く、飢えていれば食べ物がおいしく、雨や雪を防いでくれる家は頼もしく、
痛みが癒されるのはうれしく、親しい人の笑顔は心を慰めてくれます。それらと同じように、美しいもの
や感動を与えてくれるものは今を輝かせてくれます。
自分は、生きている間だけ在り、死後には無いのだから、本人にとっての死は実在しない単なる幻想で
す。人は過去や未来のためでなく、今を生きるために在ります。知らなかったことを知るのが楽しいから
学び、他人と自分の生を充実させる張り合いがあるから働き、幼い子が悦びの源になるから子どもを育て
ます。未来も過去も、今生きている意味を深めてくれるものとして、現在に収斂しています。現在だけが
実在です。
スポーツのスリリングな展開はわたしたちの今を豊かにしてくれます。マリナーズにはこれからもそん
なゲームを期待しています。スポーツは、戦争のように他人の今を傷つけることなく、遺伝子にインプッ
トされている闘争本能を開放して快をもたらす工夫です。ひいきを決めて見ないと味気ないのは、敵味方
を分ける闘争本能が背景だから。
