輝くつらら ネアンデルタール人の滅亡

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 寒い日の間に暖かい日が挟まるとつららが大きくなります。日没近い太陽の光が背後から透けて来る輝

きに、しばし見とれたりもします。


      〔ネアンデルタール人が滅び現生人類が生き残ったのはなぜ?〕


 わたしたち現生人類の生物学的分類名はホモ・サピエンス・サピエンス。ホモ・サピエンスにはもうひ

とつの種があります。それはホモ・サピエンス・ネアンデルターレンシスで、一般にネアンデルタール人

と呼ばれています。ネアンデルタール人の身体はわたしたちとほぼ同じで、現代的な服装でいま街を歩い

ていても、誰も別な種とは気づかないだろうと言われています。3,40万年前にホモ・エレクトスから

分岐し、同じ先行人類から分岐した現生人類と20万年以上は並存していたとされています。脳はわたし

たちより少し大きく、巧みに石器作を作り、死者を埋葬していました。

 NHKハイビジョン特集地球大進化」最終回の説明によると、20万年ほど前の氷河期にヨーロッパ

で繁栄していて、当時の最大人口は50万人。それが約3万年前に完全に姿を消しました。4万年前に氷

河期はピークに達し、生存条件が厳しくなります。それを乗り越えて、わたしたちは地球全域に広がり、

いま65億の人口を誇っているのに、同じような体をもち、ひょっとしたらわたしたちより賢かったかも

しれない彼らが、なぜ絶滅したのでしょう。同番組が取り上げた仮説は次のようなものです。

 音声を細かく操って複雑な言葉を話すには、喉仏が下がった長い気道で、声帯から出る音を十分共鳴さ

せなければならない。ネアンデルタール人の喉仏はゴリラやチンプなどと似た高い位置にある。また、彼

らの脳には、発語にかかわるブローカ野の皮質が発達していない。わたしたちは喉仏が低く、言語皮質が

発達しているので、言葉で細やかにコミュニケーションできる。ネアンデルタール人は複雑な言語をもた

なかったのではないか。現生人類は、言葉が発達して記憶が伝承され、学習能力が高まった。季節的に移

動する動物の大群の行動を予測して集団で効率のいい狩をしたので、厳しい氷河期を乗り切ることができ

た。このころに作られた骨に刻みのあるカレンダーが残っている。

 この仮説が正しければ、言葉がネアンデルタール人とわたしたちの運命を分けたことになります。遺伝

子の変異と自然選択による進化には、何十万年という長い時間がかかります。複雑な言葉を使う伝達の繰

り返しで、イメージを形にする能力が向上します。獲得された知が個人の生命を超えて蓄えられ、増殖し

ます。こうして文明が始まりました。言葉から始まった知の社会的進化が、他の生物は克服できなかった

自然進化の長い時間という壁を乗り越えさせました。だから1万年ほどの短時間で、文明は現在の水準に

まで飛躍しました。言葉が産んだ知と創造力と社会的協働という戦略。それが、わたしたちの運命をネア

ンデルタール人の運命から分けました。さらに今後の環境変化も生き残らせてくれるのでしょうか。