薄紅色の川原木立 コトバと手話

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 1月の北海道はやっぱり記録的な暖冬だったとか。北見は月平均気温が-5.0度で、平年の-8.8

度より3.8度高かったそうです。流氷速報の図では氷塊が能取岬沖20キロほどに迫っています。で

も、20キロ先までは肉眼では見えないでしょうね。


                  〔コトバと手話〕

 聴覚をもたずに生まれた人はどんなふうにコトバを獲得するのでしょうか。具体的なプロセスは知りま

せんが、標準的な知能と適切な環境があれば、耳が聞こえなくてもコトバを得るような気がします。ヘレ

ン・ケラーがどうやってコトバを覚えたか、テレビか映画で見たのに忘れてしまいました。

 どこかでこんなことを読みました。手話を教えられていない聴覚障害者の集団では、独自な手話が自然

発生的にできていく。また、それぞれ互いに通じない異言語を話す人々が長く一緒にくらしている場合、

どの言語ともちがう新しい言語(クレオール語)が発達する、と。チョムスキーが言うように、わたしたち

は遺伝的に言葉をもって生まれる生物なのだと思います。

 霊長類は顔面に発達した筋肉があり、表情で時々の感情を伝えて群の複雑な秩序を作るそうです。リー

ダーは動作でも群に行動の合図を送れます。しかし視覚は空間的で、時間に対しては受身です。変化を見

ることはできても、シンボルを操作するようになるまでは、先々までの行動予定を確認しあったりその他

の複雑な情報をやり取りしたりはできません。その点音声は時間に乗っていて、もともと順序がありま

す。声帯が出す音を長くなった気道で微妙に共鳴させれば、音量、音色、高低、音域、テンポ、持続時間

などのちがう多様な音声が得られます。特定のイメージが特定の音節に固定されると、単語になります。

これがイメージの外在的固定の始まりではないでしょうか。音声言語は時間を流れますから、複数のイメ

ージを順序立てて伝えられます。

 旧石器時代のわたしたちの祖先は洞窟に絵画を残しています。わたしが知る限りでは、同時代のネアン

デルタール人の絵が発見されたという報告はありません。イメージを外在的に表現できたのは、音声言語

を使い慣れていたからだと思います。外的なイメージを連続的に提示しているうちに単語がつながって文

になり、さまざまな概念が操作されるようになるでしょう。そうなれば、巧みにコトバを操って集団をリ

ードできる個体が子孫を残す上で有利です。ブローカ野を作る遺伝子の獲得は2万年ほど前のこととも言

われています。言語脳の遺伝子が現生人類に急速に広がったのは、きっとこの利点のためです。

 予めコトバがなければ手話は成立しないと思います。現生人類が音声言語を獲得した後に、聴覚や発語

筋肉の欠損を補うため、絵画から生まれた文字やシンボルとともに、手話が使われたのではないでしょう

か。ところで、情報はパターンです。表現を担うエネルギー(物質もエネルギーの一形態)のない情報は消

えます。未知の神秘的なエネルギーを操る存在なら別ですが、これまで知られている感覚しかもたない生

物は、テレパシーを使えないと思います。犬や馬などは、飼い主の表情や動作が見えますから、その人の

感情に反応できます。これはテレパシーではないですよね。表情認知から概念操作まで進むのに、何千万

年かの進化時間が必要だったようです。