庭の花8月末

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 いまウチの庭で咲いていて、今年はまだ紹介していなかった花たちを、3回に分けて載せます。トップ

はニラです。今春引っ越した裏の奥さんが植えてくれたもの。去年の秋初めて花を見ました。わたしはほ

とんど野菜として食べることはないので、もっぱら観賞用に残しています。強い匂いに似合わない清楚な

たたずまいです。次はアジサイ。こちらでは夏の花ですが、冷夏だったせいか今年は数が少なく、今月末

になって二つ三つ咲きました。あとの二枚はヤエザキシナノキンバイです。場所を変えてカエデの下に移

したので、去年ほど大きな株にはなっていません。二年草みたなので、来年はもっと咲くかな。わたしの

お気に入りの花です。


〔新しい文明の姿を考える 〕

(15) 頭脳を活かす

 前回の繰り返しになりますが、遺伝子の転写ミスがなければ生物進化はありません。そして誤転写の大

部分は役に立たないものです。同書にこういう表現があります。「イノベーションは累乗の法則に従う。

風変わりなアイデア1000件につき、実験する価値のあるものは100件にすぎない。そのうちで多額

の投資に値するものはせいぜいが10件で、最終的に大ヒットになるのは二,三件にすぎない。」(P.5

5)「もう一度言うが、イノベーションは数の勝負である。・・・・・リターンの平均値は、一つか二つの大成

功が莫大な利益をもたらしてくれるおかげで、目の玉が飛び出るほどの額になることがある。」(P.5

6)

 長時間の残業、特にサービス残業を強いられ、疲労困憊している社員からは、それにいつも日常業務に

追いまくられて一瞬も息を抜けないでいる社員からも、意表をつくアイデアは期待できません。「あなた

の会社には、社員を忙しくさせておくインセンティブがたくさんある・・・・・。しかし、未来を静かに思い描

く時間をとることを促すインセンティブは、いったいどこにあるのだろう。」(P.56)永続的に革新を続

けたい企業は、ものにならなくてもとにかくアイデアを出すことを奨励し、ミス・アイデアを罰せず、漠

然と物思いにふける時間を認めるゆとりがなくては。

 イノベーションに衆智を結集するにはムダ、ミス、ゆとりの許容が必要です。とはいえ、ただ怠けるだ

けで、やる気がなくてミスばかりしている従業員にいつまでも、会社は賃金を払い続けるわけには行きま

せん。それでも、自己責任を言い立てて解雇を通知する前に、「やる気」を出させるシステムや雰囲気が

社内にあったかどうか、点検すべきです。

 人には得手不得手があります。思いもよらぬひらめきで突破口を切り開く、アイデアに細かな肉付けを

する、実験手順を組上げる、とりあえずの試作品を作る、多様な視点から評価する。それぞれに得意分野

がちがうたくさんの人たちが、必要に応じて緩やかに連携したり緊密にチームを組んだりして柔軟に協働

できれば、各自に働き甲斐が感じられ、効率も上がります。業務配置に本人の意思がまったく反映され

ず、不得手な業務に縛り付けられていたら、意欲が萎えます。一般社員と幹部の所得格差が大きすぎた

り、報酬が業績の客観評価より上司のひいきで決められたりしたら、やる気が出ません。

 未来型経営のヒントとして同書が取り上げている会社には、オープンな情報交換網が横に広がっていま

した。参加する部署やプロジェクトを自分で選んだり、自分の関心やアイデアを広くアピールしたり、同

僚に偏りのない評価を求めたりできるシステムがあります。そして、幹部の権限は小さく一般社員の権限

が大きくなっています。最低保障以上の報酬は地位や幹部の裁量より、仲間による業績評価で決まりま

す。幹部と一般社員の収入格差を広げすぎない配慮もあります。これらの企業はいずれも「働きやすい企

業」ランキングで上位を占め、離職率が低くなっていました。

 「日経サイエンス」08年7月号(P.11)に、英国で行われた調査研究の短い記事があります。「序列

の最も低いホワイトカラー労働者は若死にするリスクが最大だった。」「自分の仕事についてどの程度の

管理・裁量が利くか、そしてどのように仕事をしたかが問題だ」、と書かれていました。個人の筋肉能力

には、牛馬や動力機械に比べればずっと小さな限界があります。しかし、個人の脳がもつ可能性はちがい

ます。それはまだほんの少しの人でしか十分には活用されていないと思います。筋肉労働はできるだけ機

械化し、頭脳労働を拡大することが労働生産性の飛躍につながります。筋肉とちがって脳の効率は、管

理・命令では向上しません。それに、指示に従うだけの頭脳労働は単なる労苦となり、心身の健康を蝕み

ます。権限の下方委譲と決定への一般社員の参加が、未来型労働への出発点ではないでしょうか。

 一般人の脳がもつ可能性への信頼の欠如こそが、官僚型組織の致命的欠点だと思います。著者はこう主

張しています。


  (前略)実際には、創造力は・・・・・他のすべての能力と同じく指導と練習によって強化できるのであ 

 る。 

  確かに創造力の程度は人によって異なるが、企業社会の殺風景な環境では、自分の持てる創造力を最

 大限に発揮している人はほとんどいない。だが、それは自分の能力を発揮するためのツールや時間を与

 えられてこなかったからであり、発揮する責任を負わされてもいないからだ。(後略)(P.64))


  (前略)人間としての我々は驚異的な適応能力と創造力を備えているのだが、ほとんどの人がそうでは

 ない企業で、つまり、あまり人間的ではない組織で働いているのである。

  現代の組織には人間の天性のしなやかさや想像力を枯渇させるもの、社員からこれらの資質を奪い取

 るものがあるようだ。その正体はというと、規律、時間厳守、経済性、合理性、秩序を促進し、芸術

 性、不従順、独創性、大胆さ、情熱にはほとんど価値を置かない経営管理の原理やプロセスである。簡

 単にいうと、ほとんどの企業が、我々を人間たらしめている資質や能力のごく一部しか受け容れる余地

 がないため、部分的にしか人間的ではないのである。何十億人もの人が毎日職場に姿を現すが、その多

 くが半ば眠っている。その結果は、彼らの潜在的な力を十分引き出していない組織ということになる。 
 (P.70)



 人の脳はどのひとつをとっても、他の脳とまったく同じということはありません。そして、知能や情動

を担う神経組織は新しい情報に出会うたびに発達し、旧い神経回路を修飾しつづけます。遺伝子に比べ、

脳は多様性がずっと大きい。質的な多様性ですから、量的に量ることができる筋肉の能力ともちがいま

す。多様な脳が協働するネットワークは、孤立した「優れた」脳より、はるかに大きな仕事ができます。

脳ネットワークを活用する環境がどんどん充実してきているのが現代です。浮上する新しい可能性とその

実現を阻害する旧いしがらみが、いまいたるところでぶつかり合ってきしんでいます。旧いしがらみを振

り払うことに成功した場所から、新しい文明が広がっていく、そういう時代だと思います。 (続く)