山のお花畑

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 ここまで個別に紹介してきた花たちを、今日は集合写真で見てやってください。


 〔新しい文明の姿を考える 〕

(11) 経営管理イノベーションを阻む構造

 著者が未来型企業のヒントとして取り上げている会社には、次のような顕著な特徴があります。.▲

ディア尊重:全社員にイノベーションやアイディアを思いついて育てることが期待されていて、そのため

の自主的な活動が時間のゆとりや資源分配などで支援される。⊆卞眈霾鵑瞭明化:全社員に、財務・業

務・人事・報酬・評価についての情報へのアクセスが許されている。社内民主主義:権限の下方移動が

進み、社員の決定権が尊重され、縦より横の情報流通が活発で、年功や情実などによる権限の偏りが排さ

れている。ね?廚鯆兇┐詭榲意識が共有されている。少なくとも今のところ、,らい里茲Δ並臙世

経営管理イノベーションを進めた会社は経営的に大成功しているのに、なぜ他の多くの企業はこの方向に

踏み出さないのでしょうか。

 まず、たいていの経営管理者が自分の利益・立場が改革で損なわれる可能性を危惧します。従来の企業

では、経営にかかわる重要な発案・決定は管理職の責務・権限であり、会社を維持・発展させた第一の功

績は彼らのもので、彼らにはそれに見合う権威と報酬で報いられる権利がある、と考えられています。例

にあげられているような改革が行われれば、責務と権限が全社員に分散され、その結果管理職はいままで

のような特権を享受できなくなるかもしれません。

 同書にはこんな表現があります。「企業は、組織の成功はCEOと上級幹部チームのリーダーシップの

質に大きく左右されるという考えにしがみついている」(P.215)。企業幹部には、「肩書きや階級にそれ

に相応する権力が伴っている・・・・・心地よい現実」がある (P.121)。「現状を生きながらえらせることが

幹部の個人的な利益にかなう」(P.207)。さらに、社員の「自由の増大は監督の減少を意味し、監督の減

少は権威の低下を、そしておそらくは管理職の減少を意味する」と、指摘されています(P.175)。著者

は、自分も経営学の教授なのだから、会社にとって「臨時の資源ニーズにすぎない」「従業員について管理

職に教える」立場なので、彼らを軽々しく非難はできないという意味の記述を付け加えています。

 次に、幹部としての能力や態度がこの種の改革を進める上で障害になるということがあります。同書で

は、管理職に選ばれる基準になり、管理職になってから鍛えられ、報酬を与えられる能力は、同じものを

より多く、より効率的に産み出し、他人のアイディアを成長と利益に変える能力であって、自ら独創的な

アイディアを生み出し、新製品を開発する能力ではない、と示唆されています(P.42)。さらに、 責任

者として管理する資源が大きければ大きいほどその人の権限が大きくなり、彼の成功は管理する部門やプ

ロジェクトの業績で評価されるので、管理職は人材や新しいプロジェクトへの資源分配に反対する傾向が

あることも指摘されています(P.57)。

 幹部は、自分が議論の流れを決め、自分の考え方が他のみんなの考えより優先されることに、責任者と

しての意味を見出しています(P.244)。現場の社員との一対一のやり取りでなら安心していられるけれ

ども、社員が彼を通さずに他の社員に語りかけるようになると、心穏やかでなくなります(P.245)。一

対多、多対一なら管理職として鍛えられた能力が物を言うのに、多対多では地位ではなく発言の中身が吟

味されるため、みんなのなかの一人に埋没してしまう恐れがありますから。

 昇進したいという野心をもつ管理職の大多数が、失敗に対する恐怖心をもっていますから、事実にもと

づく細かい分析と財務予測を要求されたり、新規事業への投資の不確実性とリスクを引き受けさせられた

りすることにしり込みをして、長い実績のある安全な事業でキャリアを築こうとします。そのため新規事

業に有能な管理職を引き寄せることができません(P.280・1)。

 たいていの企業リーダーには、自分をその地位に押し上げた過去の成功路線への強い思い入れがあり、

彼によって地位を左右される人々はそれに合わせて発言を自己規制しがちです (P.66)。大企業のトッ

プはふつう、変化の最先端から離れたところにいるため、独力では危機を察知できません。彼の生活から

遠い周辺で鳴っている警報は聞こえないのです。(P.54) それなのにリーダーにとって不愉快な情報は

階層を上るにつれて無視され、切り捨てられます(P.59)。

 いままでの常識では、イノベーションやアイディアの評価、採用、推進は、もっぱら管理職の責任であ

り権限であるとされています。下級社員にはイノベーションを考える動機がありません。たまたま大きく

発展する可能性があるアイディアを思いついても、誰にもすぐわかるほど利益が確実なもの以外、たいて

い上司に無視されます。従来型の企業では、下からの提案を独断的に却下しない寛容さ、不完全なアイデ

ィアに将来の可能性を見て資金を回そうとする優れた洞察力、開発を実行させるカリスマ性と政治的駆け

引き能力の、すべてがそなわった上司に恵まれる確率は、とても小さくなっています(P.208)。

 企業には(そして中央・地方政府などの組織にも)、,らい諒??任硫?廚膨餽海垢詁睇構造があり

ます。しかしその外壁に、産業化から情報化へ移行しつつある外部社会から、大波が激しく打ち寄せてい

ます。長期的には官僚主義的階級制が強固な組織は淘汰されるでしょう。管理能力に優れたエリート中心

の官僚組織が、民主主義への転換を求められているのだと思います。首長や議員を選挙で選ぶという表面

的な民主主義のことではありません。上下の序列ではなく、透明で柔軟な横のコミュニケーションが秩序

を支える、社会の底辺からの民主化です。新しい文明の基礎になるのは、きっとそういう組織です。(続

く)