灯台と朝空 文明崩壊
まりさん、水分の多い空気を通る日光は赤く見えると、どこかで聞いたことがあります。砂漠や流氷の海に昇る
陽や沈む陽はどんな色になるのかなー。ハノーファの町の写真、どれもすっきりした感じだと思っていましたが、
電柱・電線がないからですね。こちらでは下の写真を撮るときにも、じゃまになっていました。
灯台の明かりはくるくる回転しています。光が正面に来たときにシャッターを切ったつもりですが、いくらかずれ
が見られます。半月が懸かる中天だけが青空と白雲でした。
シャレド・ダイヤモンドの『文明崩壊』上下(草思社 楡井浩一訳)を少しずつ読みすすめています。かつてイー
スター島に栄えた文明が崩壊するくだりは、著者の現代文明に対する懸念を象徴していて、たくさんのことを考
えさせられます。
かつてのイースター島住民は、当時世界最高だった造船・航海術を駆使して、太平洋に孤立していたこの島に
移り住み、知恵と技術で高度な文明を築いた人々です。その文明が、疫病や外敵に襲われたわけでも、気候が
激変したわけでもないのに、人肉食に頼るところまでどんどん衰退し、ついに滅亡しました。孤立していたがゆえ
に、外部に対抗して統合を強化するのではなく、威勢を示す祭壇と石像(モアイ)の巨大化を内部で競い合い、す
べての樹を刈り尽して環境を劣化させた結果です。
今のわたしたちの目から見れば、最後の樹が切り倒されたとき、文明の崩壊は避けられないものになったとわ
かります。それはわたしたちがイースター島のその後を知っているから。渦中の人々は、少なくとも多数人々は、
自分たちの選択の意味を自覚できませんでした。現在のグローバル化した世界は、地球に内閉されて孤立して
います。対抗する外部をもたず、やはり内部で威勢を競い合っています。
大の役割です。その政治機能が劣化した文明は、自然の変動によるわずかに衝撃にも耐えられず、やがて滅
亡すると考えられます。渦中にいると、大局的な判断が難しいのは今も同じです。しかしわたしたちは、イースタ
ー島住民とはちがって、過去の文明史を俯瞰できる情報社会に生きています。そのつもりになれば、最後の樹
の一本を切り倒す前に、事態を自覚することができるはずなのですが。