のど赤ノゴマ ムダの効用 番外編①
植物や野鳥の名前がなかなか覚えられないわたしですが、赤い喉が特徴的なノゴマはわりあいたやすく見分
けられます。この写真は能取岬で牧場を囲む鉄条網に止まっていたところを撮ったものです。
ムダの効用 番外篇 ヤノマミ ①
① <ヤノマミ族のワトリキ集団>
ちをそう呼ぶ、主に狩猟採集でくらす森の民が1000万人から5000万人いたと言われま
す。西欧人渡来後500年で、持ち込まれた病原菌と虐殺によって彼らの99%以上が絶滅
しました。いまも生残っているのは、アマゾンの奥深い「未踏のジャングル」註に逃
れた人々だけです。(19頁)
いると推定されています。30人から200人で集団を作り、集団間の距離は近くても100
キロほど。親戚関係のない集団はほとんど交流せず、集団の数は200とも300とも言わ
れます。焼畑をする土地が枯れたり、狩の獲物が減ったりすると遠くまで頻繁に移動
するので、全体の所在地や集団の現状は誰にもわからないようです。(19頁)
ブラジルでは1991年に、北海道の1.4倍にあたる面積の森がヤノマミ保護区に指定さ
を求めて入り込んで、川を水銀などで汚染させています。重機が作る掘り跡では、も
ります。また農場がときには越境して拡大されるので、保護区の境界域ではヤノマミ
と農場主との争いが後を絶たないそうです。(20・21頁)
回、合計150日間、ワトリキに住む集団とともにくらしました。この集団は1970代に初
半になって国と和解しています。(22・23頁)
ヤノマミはシャボノと呼ばれる巨大な一つの家で集団の全員がくらします。ワトリ
キでは167人が住むシャボノに、それぞれの家族ごとの38の囲炉裏があります。その間
に間仕切りはなく、「食べている時も、寝ている時も、あるいは性行為の最中でさ
え、他人から丸見え」になります。(25頁) 隣の囲炉裏の人々とはたいてい互いに血縁
で、大家族が7つあります。ただし集団全体で血縁関係が複雑に絡み合っていて、この
集団全体が「一つの大きな家族なのだ」と思えてきたと書かれています。大家族の家
長が7人、長老としてことあるごとに集まって協議します。シャーマンで長老の一人で
あるシャボリ・バタがこの集団を作ったようです。(116・117頁)シャボリ・バタはかつ
て、文明のもたらした疫病によって属していた大集団が壊滅状態になり、家族を失っ
ています。放浪の過程で通りかかった村々で生残った者たちを仲間に加えて、現在の
集団規模にまで育て上げたのでしょう。(237-257頁)
註:著者はアマゾンの大森林が人の手が入ったことのないジャングルで、ヤノマミ
の現在のくらしは太古の狩猟採集生活から連続していると、考えているふしがありま
す。しかし近年になって、アマゾン川流域に耕地と管理された森をもつ大きな古代文
えていた田園都市文明」M.J.ヘッケンバーガーおよび「古代アマゾン文明」実松
の後に自然経済に戻った人々の末裔が含まれているかもしれません。文明後に再び狩
猟採集生活に入ったとすれば、きっと本来の自然経済集団にはない要素も持ち込まれ
て残ります。
それともう一つ、今のヤノマミはヨーロッパ文明による大虐殺をかろうじて生残っ
た人々です。ニューギニアの「原始部族」もそうですが、文明との過酷な戦いを経験
した狩猟民には暴力性が強くなるのではないかと、わたしは考えています。ヤノマミ
はかつて集団間で激しく殺し合ったとされています。20章-26章でとりあげたグイの
人々は、あまり争うことなく食料生産に適さない砂漠地帯に逃れて、太古からの狩猟
採集生活を継続したのでしょうか。彼らには狩猟採集民本来の精神世界が、ヤノマミ
より変質せずに残っていたような気がします。それでもヤノマミにもグイの人々を思
わせるところがたくさんあります。自然と対立しない、自然の一部としてのくらしが
共通だからだと思います。(続く)