春姿藻琴山 食糧の未来 2

 クレマチスさん、30年以上前、埼玉の駅近い土地を買って家を建てたとき、まわりは一面レンゲの原でした。
 
新駅の前の耕地を鉄道会社が買い占めて、値上がりを待って放置していたからです。かつて、窒素肥料として
 
耕作前に繁殖させていた名残なのでしょう。北海道では、カラシナとヒマワリをいまも耕作ローテーションに組み
 
入れて、緑肥にしている農家が少なくないみたい。ところで、山陰のバスツアーは楽しかったようですね。わたし
 
横山大観の絵は大好きです。
 
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 今も雪が降り続き、窓の外は白く染まっています。気温は0度か-1度というところですし、午後からは雨に変
 
わる予報ですので、すぐ消えるでしょう。街ではすぐに消えても、山にはまだまだ残りそう。初めの3枚は美幌
 
で、次は美幌峠で、最後は屈斜路湖で撮りました。
 
 
食糧の未来 
 
2 農業工場
 
日経サイエンス」2010年2月号に、D.デボミエが書いた『摩天楼で農業』と題する記事が掲
 
載されています。まずこの記事と、監修者による日本について補遺の、要点を紹介します。
 
屋内植物工場はすでに、英国、オランダ、デンマーク、ドイツ、ニュージーランドに、かなり大規
 
模な水耕栽培施設がある。アメリカのアリゾナ砂漠では、1.3㎢のユーロフレッシュ・ファームが
 
高品質のトマト、キューリ、ピーマンなどを通年生産している。日本は、フェアリーエンジェル(
 
社京都) が葉野菜を生産して直営レストランで提供。千葉の「みらい」は植物工場で生産した野菜を、
 
一体となっている店で販売。政府は09年度の補正予算で植物工場支援に150億円を組み、経産省
 
館に工場モデルを設置。
 
D.デボミエは、これらの施設は現在やや田舎にあるとして、都市のガラス張り高層ビルで作物を
 
育てることを提案しています。噴霧耕栽培は根菜に、水耕栽培は実や葉を食べる野菜に、点滴灌漑は
 
穀物に向いているので、それらを各階に配置。0.02㎢の30階建て農場は、10㎢の農場に相当
 
する作物を生産できる、と。
 
次のようなメリットが指摘されています。農業機械が不要になって化石燃料が節約される。大消費
 
地のなかにあるから輸送費がほとんどかからず、従来は輸送と貯蔵で失われていた3割の損失がなく
 
なる。完全な管理が可能なので、肥料や農薬の流出による環境汚染を防ぐことができる。通年生産
 
で、レタスなら6週間ごとの、トウモロコシや小麦のような成長の遅い穀物でも年3、4回の収穫が
 
可能。都市排 水のリサイクルで灌漑され、その汚泥と作物の非可食部分を発電に使う、など。
 
大きな建物の屋上農場でも屋外の6倍の耕地に当たる収穫が可能。屋上農場と必要な数の農業ビル
 
建設で、新たな雇用が創出され、農園を二酸化炭素を吸収する緑地に戻すことができ(現在の農民が
 
管理)最終的に必要なだけの木材を供給する森林状態を維持できる、と。
 
 
50年前の世界総人口に匹敵する人数が、これから40年間で増えるのです。ブラジルの総面積分
 
に当たる耕地を新に開拓することも、緑の革命路線を強化することも、地球を人の住めない星に変え
 
ることになるのだとすれば、植物工場のアイデアを採用するしかないのかもしれません。それも遠い
 
未来を待つことはできず、技術的、社会的問題点を早急に洗い出して、緊急に大規模な実証実験を始
 
めなくては。
 
そう思う一方で、土壌を使わない農業工場の作物は人の身体を変えてしまうのではという、懸念も
 
湧いてきます。人体をカロリーと既知の栄養分だけで組み立てていいものなのでしょうか。土壌植物
 
に含まれる未知の微量成分が、何らかの役割をはたしている可能性はないのでしょうか。最近、土壌
 
生物と植物の複雑極まりない相互作用の、ほんの一端がわかってきています。次回はそれがテーマで
 
す。(最終回に続く)