コガラ 食糧の未来 3

 タムラ、クレマチスさん、庭じゅうに順に穴を掘って、草や作物残滓を埋め、コンポストの中身を播いているせい
 
か、ウチのホウレンソウとカボチャは、分けた近所の人に味をほめられました。農薬と化学肥料はほとんど使い
 
ませんが、コンポストの中身には肉や作物に使われたものが混じっているでしょうね。
 
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 先月ウチの庭で遊んでいたコガラたちです。小鳥シリーズのときアップし忘れていたような。6枚目はハシブト
 
ガラかもしれません。カラとかガラとかが付くのは、シジュウカラの仲間みたい。キツツキ類のゲラと紛らわしい
 
ですね。
 
 
食糧の未来
 
3 土のなかの小宇宙
 
今回のタイトルは、NHK教育テレビ・サイエンスZEROで4月17日に放送された番組、「つな
 
がる生物の謎」のサブタイトルを盗用しました。番組で森林の土1gのなかにいるバクテリアの数
 
を聞いてびっくり。なんと50億だそうです。世界の総人口が68億ですよ。もっとも人とバクテ
 
リアの個体数を比較するのは無意味ですね。バクテリアはいわば独立細胞のようなもので、ヒト一
 
人が60兆の細胞でできていますから。
 
それにしても、森を歩くわたしの片足に当たる面積の地中に、ミミズ、ダンゴムシ、ヤツデ、ト
 
ビムシ、ダニなどの小動物が、千匹はいるそうです。土壌のなかでこれらの小動物と、無数のバク
 
テリアや菌類の地中微生物が、相互作用をして生きているわけです。例えば、微生物の多くは休眠
 
状態にあるけれど、ミミズやヤスデに飲み込まれると活性化するのだとか。畑でも豊かな土はよく
 
見ると小さな粒でできています。番組はこれをミミズの糞だと説明していました。活性化された微
 
生物の塊ということですね。
 
番組のテーマは土壌で育つ植物と地中微生物の相互作用でした。培養ができないため、現代科学
 
は地中微生物の99%以上について、種類も機能もまだ解明できていないのだそうです。ただ植物
 
体内に摂り入れられる(入り込む)微生物(エンドファイト)について、最近ようやく少しだけ植物
 
との相互作用の仕組みわかってきたのだ、と。根瘤菌の菌糸とマメ科植物の双方からシグナル物質
 
が出て、根のなかに菌糸が伸びていくさまが、映像とともに紹介されていました。このシグナルと
 
なる化学物質が、茎では株張りを促す植物ホルモンの働きをすることも。カビとバクテリアの共
 
生、アスパラの連作障害や気温ストレスに抵抗する反応を導くエンドファイトの話も、興味深いも
 
のでした。地中生物の膨大な個体数といい、相互作用の複雑さといい、人が知らないことの多さと
 
いい、地中には小宇宙があると考えた番組製作者の気持ちに共感できます。
 
さて、人工合成された薬品と肥料を多用する前の農業は、意識はしなくても地中の小宇宙をあま
 
り壊さないようにしていたと思います。前回紹介した土壌を使わない植物工場は、少なくとも近未
 
来では、この小宇宙を人工的に再現することができません。
 
わたしたちの体重の何割かは、60兆の人体細胞そのものではなく、体内微生物の質量である
 
と、何かで読んだ記憶があります。それらの微生物をすべて除菌したら、わたしたちは生きられな
 
いのだそうです。この体内微生物は、わたしたちが食物と一緒に摂取するエンドファイトや、それ
 
らが作る化学物質とは、無関係なのでしょうか。
 
まだわたしたちがよく知らないものも含む自然の物質循環の内部で、いままでヒトは生きてきま
 
した。植物工場への依存は、自然な生物連鎖とは別に人為的な循環を強化する方向のような気がし
 
ます。100億近い人が農地を奪い合って争い、環境を激変させ、他の生物を巻き添えにして滅ぶ
 
より、自分たちだけの閉鎖環境の内部に閉じこもって、余分な土地を他の生物に返す方を選ぶ。そ
 
れも一つの選択かもしれません。たとえ人体を人工物に近づけることになるとしても。それとも、
 
ヒトを9割ほど死滅させて、自然循環の内部に留まりましょうか。(終わり)