ナナカマドつややか
美幌霊園入り口はナナカマドの並木になっています。先月末、陽光を受けた実がつややかに輝き、葉の秋色も
濃くなっていました。実は九月に黄色になって、いまは黒が混じっています。雪が乗った枯枝に赤い実がついて
いることはありますが、年を越すともうあまり見かけません。黒く熟して柔らかくなると、鳥に食べられたり落ちた
りするのでしょうか。
ではないかと気がかりです。今年になって、例えばインド・パキスタンの局地核戦争だけで、核の冬(数十年にわ
たって太陽光が遮られ食糧生産がほぼ壊滅する)がもたらされ、人類は滅亡の縁に立つことになるという研究が
発表されました(「日経サイエンス」4月号)。冷戦が終わってから、「核の冬」の脅威が遠ざかったような気になっ
ていました。でも現実には核兵器の拡散によって、局地戦争で文明崩壊の引き金が引かれる可能性も出てきて
いるようです。
地球は大陸分裂や衝突、海洋脱酸素化、スノーボールアース、小天体衝突など、全面核戦争よりずっと大規
模な変異を何度も繰り返して現在に至っています。そのたびに生物は絶滅の危機からよみがえり、進化を続け
ています。全面核戦争も人為的環境破壊もこの歩みを止めることはないでしょう。しかし現代文明はまだ、わず
かな気候変動で崩壊する脆弱なシステムです。今世紀になってヒトにとって必要な環境の劣化が加速している
徴候があります。ここ半世紀が、ヒトの生存可能な環境を維持できるかどうかの正念場、そんな気がしていまし
た。それだけにオバマ政権の出現に期待したのですが。
茶会キャンペーンに主導されたアメリカの草の根保守の動きを見ていると、わたしたちの懸念する文明の現在
など視野になく、古きよきアメリカの幻想に酔っているとしか思えません。彼らの主張どおり、軍事以外の政府の
役割を縮小し、いま進行している格差拡大を放置すれば、貧困層の絶望的な騒擾と対抗する保守層の武器によ
る自衛の悪循環がエスカレートします。この国のリーダーたちが世界に責任をもつ余地がどんどん狭められま
す。世界の将来を左右する超大国のことですから、わたしたちも他人事として無関心ではいられません。と言っ
ても何もできるわけではないし。何とも憂鬱な事態です。
「民主主義」に懐疑をいだきはじめた人々の気持ちもわからないではない、そんな気分です。一世紀前なら、だ
いじょうぶだよ今にゆり戻しが来て少しずつ前進するから、と考えていられました。でも全世界が運命共同体にな
り、時間との勝負という段階に入っていますから。