春の小川に濁り水

 
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 魚無川を流れる水は濁っていました。崖の日陰にはまだ雪が残っていますから、融けて流れ込むときに泥を巻
 
き込むのでしょう。枯れ草色が主流の川岸では、次々に頭をもたげては花を露出させているフキノトウに目を惹
 
かれます。
 
 
 CSで故神代辰巳監督作品を特集しているチャンネルがあって、何気なく見ているうちに引き込まれてしまいま
 
した。それ以後できるだけ逃さないように録画しています。日活ロマンポルノで名をあげて、その後で一般作品も
 
撮るようになった監督です。当時からファンだった人には、何をいまさらと思われるでしょうね。でも、わたしには
 
映像に溺れるゆとりがなかった時期でしたから。
 
 多くは20年以上前に撮られています。古い映画には時代のちがいが違和感になるものが多いので、古典的な
 
名作以外、近年の作品を中心に見ていました。ところが神代作品には、気持ちを醒めさせる隙間がほとんどあり
 
ません。実際のテンポはそれほど速いわけではないのに、ERなどのアメリカ製ドラマに劣らず、目を逸らさせな
 
い緊迫感があります。
 
 彼の作品ではストーリーや思想性はあまり重要ではないみたい。起承転結が荒唐無稽というわけではありま
 
せん。ただ、登場人物の長い人生ではなく、それぞれの局面でのひたむきさをみごとに映像化しているところに、
 
わたしは魅せられたようです。ひたむきにグレ、ひたむきに体を絡ませる、そのシーンがはらむ不安。
 
 俳優たちの演技にも半端ではないひたむきさがあります。特に若き日の桃井かおり、倍賞姉妹など、今は大女
 
優になっている女性陣が。俳優とは、自分の身体のすべてを手段として、心のはらわたまで表現する、とても厳
 
しい職業なのだと納得させられました。