寄せ来る波か割れ氷
ものがたくさんあって、この地にくらす幸せをしみじみ感じます。
一昨日帰ってから開いた新聞の道内版に、「氷の山脈」と題して、屈斜路湖の写真が掲載されていまし
た。わたしは、山並みのように盛り上がる割れ氷の白い直線を見ていて、寄せては返す波頭がそのまま凍
りついたような錯覚にとらわれました。遠く近くを交互に眺めていると、リズムさえ感じられます。
湖はお湯の湧き出すあたりを除いて、今年は湖面全体が凍結していました。おびただしい数の鴨や白鳥
が集まる砂湯は、湖畔観光の中心スポットです。平日にもかかわらず、次々観光バスがやってきて、中国
語や日本語の喧騒が高まっては引いていきます。一面の青い湖水や白く平らな湖面ではなく、ダイナミッ
クな風景を見ることができたこの日の観光客は、幸運だったと思います。
去年は最後まで全面凍結はなかったようです。一昨年は御神渡りの数が少なく、砂湯からは見えません
でした。できていたのは、白鳥集うあたりから湖畔沿いに、林の雪道を10分か15分川湯方向に歩いた
場所。今年もその付近に大きな盛り上がりが密集しています。地元の人は見慣れているだけに、御神渡り
の観光価値を白鳥ほど重視していないのでしょうか。踏み跡が付いていて薮漕ぎの必要はないものの、案
内表示はありません。
一人静かにツグミのさえずりを聞きながら、迫力ある氷の小山に囲まれている。わたしには心満たされ
る時間でした。喧騒がここまで及ばないことを喜ぶ一方で、ちょっと歩けばこんなにすばらしい場所があ
ることに気づかないまま立ち去る人々を、気の毒にも思いました。