樹氷に霞

イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

イメージ 4

イメージ 5

  orion*.:‘さん、つららは雪国ではありふれた風景ですから、写真をアップしている人も多いでしょ

うね。背丈ほどの長さになったり、さまざまな色で輝いたりしますけれど、微細な違いは忘れられて一般

的な印象が記憶に残りやすい、基本的に単純な絵柄だと思います。


 今日はすでに+4度台の気温を示したという気象情報がありました。こういうときは冒頭のような風景

になりません。厳冬期にプラスの気温はなんだか気持ち悪くて。樹氷輝き霞流れる朝がオホーツク地方の

冬ですよ。


                 〔『46年目の光』6〕

 過去1000年間の記録に残っているもので、3歳未満で失明し長い期間を経て視力を回復した例は20件

だけ。そのすべてで、新しい視力は「奇妙で不可解」であり、患者は「深刻な心理的危機に直面した」、

と本書には書かれています。(122頁)マイク・メイの絶望は彼だけのものではありませんでした。それで

もメイは、信じられないほどの気力で絶望の淵から這い上がります。

 どうしたら目に映る対象のリアリティーが自動的に得られるようになるのか、それを教えられる人は誰

もいません。彼は見ることに集中したり、視覚以外の手がかりの利用を強化したり、試行錯誤を重ねま

す。しかし事態はまったく改善されません。最後に彼は、「もう一度、失明者に戻ることによって、もの

を見る方法を学ぶというアイデア」(404頁)に思い至りました。見ながらではなく見る前に、失明してい

たときと同じ方法で知識を得ておくということです。

 最初に空港で試しました。しかし、色と形から成る無秩序な世界が四方八方から目に押し寄せてきて、

失敗に終わります。次はホテルの会議室で挑戦します。杖と手で部屋と室内のあらゆる物に触り、自分の

声の反響に耳を澄ませます。「するとある瞬間を境に、その空間がさまざまな形と色のおもちゃ箱ではな

く」なりました。「部屋の中のものを見るのに、どれ一つとして苦労を要しなかった」のです。「その後

も、視覚を脇役に回し、そのほかの感覚を情報処理作業の先頭に立たせる練習を続け」、「それまでより

スピーディーに、しかも正確にものを見てわかるように」なりました。「普通の視覚をもつ人に比べれば

お話にならない」ものの、どんどん見ることが簡単になります。(405頁)

 しかしこの方法が使えないケースもたくさんあります。目の前を行進するパレード、飛行機の客室乗務

員と乗客の区別、透明プラスチックに入った商品などには、触覚も反響音も役に立ちません。彼は自分の

得意技である記憶力と整理整頓能力を活用することにします。飛行機内で隣り合わせた人に尋ねて、客室

乗務員と乗客の区別の仕方を会得しました。おそろいの制服を着ていて、離陸のとき乗客に顔を向けてい

るのが客室乗務員である、と。こうして彼は、「手がかりを記憶し、脳内のカタログを充実」(409頁)さ

せていきます。

 メイは、検査して彼のニューロン欠損を知らせてくれた研究者に次に出会ったとき、「あなたが本当の

ことを言ってくれて、心から感謝しています。そうでなければ前に進めなかったと思う」と言いました。

(410頁)多くの人は、医者が彼の身体の状態について絶望的な事実だけ伝えて対処の方法を示さなかった

ら、きっと医者を恨むでしょう。 (続く)