コケモモとアキノキリンソウ
入った岩場で、コケモモの実を見つけました。赤い実が球形でなく楕円形なのが気になって、一粒口にし
てみました。完熟とはいきませんが、覚えのある味でしたから、多分まちがいないと思います。コケモモ
がこの標高で自生しているとは意外でした。内地では高山でしか見たことがなく、北海道で味わったのは
羅臼平でしたから。アキノキリンソウはちょっと見ではハンゴンソウに似ているけれど、葉に切れ込みが
なく、花も心なしか可憐な感じです。平地にも咲きますが、やはり山地の風景が似合うような。
この歳になって新しい感覚体験が急に増えました。右半身の椎間板ヘルニアによるしびれ痛みはもうな
じみですが、しばらく前から左脚に覚えている痛みはまたちがう種類です。話に聞いていた神経痛という
ものではないかと見当をつけています。服用している抗がん剤の説明で見た副作用の一つです。もっとも
前回の血液検査では尿酸値に異常はありませんでした。症状がもっとひどくならないと出ないのかな。
痛みには個人差が大きいようです。何で読んだのか忘れましたが、脳神経細胞の痛覚受容体たんぱく質
に多形があるため、痛み信号に敏感だったり鈍感だったりするのだとか。多形といえば、「日経サイエン
ス」9月号に一塩基多形(SNP=スニップ)に関する記事がありました(50~58頁)。一つのアミノ酸
は3文字の塩基でコードされています。ところが、同じアミノ酸を異なる三文字が指定する(同義コドン)
のだそうです。例えば、CGU、CGC、CGA、CGGはすべてアルギニンです。最後の一つがU、C、G、Aのどれで
あるかが人によってちがうのはSNPです。
SNPで症状や薬の効き方にちがいが出るのは知っていました。でも同じアミノ酸ができるのになぜち
がうのか、ずっと疑問でしたが、この記事で納得しました。DNAから転写されたRNAがmRNAに整
理されたり、リボゾームでtRNAがアミノ酸を鎖状につないだりする効率が、最後の一文字でちがうの
だそうです。アミノ酸ができるスピードや量にちがいがあれば、出来上がるたんぱく質にも影響します。
記事はもっと詳細に説明していますので、興味がある方は読んでみてください。
入院中にわたしは4種類の鎮痛剤を試しています。薬の名前は確かめませんでしたが、飲み薬、座薬、
静脈点滴、筋肉注射です。飲み薬はまったく効かず、座薬はわずかに痛みが和らぐ程度で、静脈点滴は完
全に痛みを抑え、筋肉注射は目まいなど不快感がありました。もっともこのときの座薬は、退院後歯茎の
激痛で苦しんだとき使ってみたら、すばらしい効き目でした。歯医者にリクエストして同じものを処方し
てもらったら、薬効成分の量が外科の3分の一以下で、まったくダメでした。医者にもわたしにどの薬か
がどの量で効くのか、わかっていなかったようです。外科はわかっていないことを前提に、どれを使うか
わたしに選ばせてくれました。歯医者はそんな配慮がなく、一方的でした。
いまわたしが自分のゲノム解読を依頼したらいくらぐらいかかるのでしょう。かつては億円単位のコス
トだったようですが、いまは何十万円かでできるのかな。やがてもっと安くなりそうですから、SNPと
一つ一つ症状、薬との関係がデータバンクに蓄えられ、患者一人ひとりに適した選択があたりまえな時代
が来るでしょう。それまでは、自分が標準型とはちがう可能性を意識しておいて、一方的な医者に対して
は積極的に自己主張しないと、患者は余分な苦痛に耐えなければならないことになります。