岬の残氷

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 先月末福寿草を撮りに能取岬に行ったとき、崖下の一部に奇妙に白い氷が残っていました。冬の流氷や

新雪の色とはちがって、精製塩か洗剤の泡のような白です。近づいて手を触れてみれば原因がわかったの

かもしれませんが、急峻な崖ですからそれもかなわず、疑問を抱えたまま帰りました。


 NHKテレビで「世界で一番寒い村」という番組を放送していました。ご覧になりましたか。人の定住

地としては世界でもっとも寒い場所として、ギネスブックに登録されているそうです。東シベリアのオイ

ミャコン村で、人口は900人。冬の平均気温が-50度で、-70度を下回る日もあるとか。-35度

を下回ると車は氷の上でスリップしなくなるというのは、わたしには新しい知識です。

 2月の-50度の日、リポーターは咳き込み、寒い寒いと叫んでいました。村人は彼に今日は温かいよ

と言います。-60度程度だった1月に比べ春が近づいて10度も上がったから、と。川の氷の下に仕掛

けた網にかかった魚を、素手で掴んでいます。主婦は防寒着を着けないまま洗濯物を乾しに外に出ていま

す。こんな低温にも人は適応するんですね。

 学校のクラブ活動で口琴を合奏していました。網走の北方民族博物館に展示されているアイヌの楽器に

似ているようです。中央アジアの寒冷地帯の人々が鳴らしている映像を見たこともあります。なぜ寒い場

所で同じように楽器が伝承されているのか、この番組でわかったような気がしました。小鳥の鳴き声、狼

の遠吠え、トナカイや馬の足音、雪原を渡る風の音など、環境のなかでなじみがある音を出せるからでは

ないでしょうか。

 村人は土地のくらしが気に入っているようでした。暖かい場所や都会には移りたくないみたい。寒冷地

には寒冷地の豊かさがあって、厳しい季節を乗り切るために人々は協働し、そこから気持ちの強いつなが

りができているようです。熱帯から極寒の地まで、地球上のほとんどあらゆる場所にヒトが拡散した最大

の要因は、高度な協働を実現する知能を獲得したから、そんな気がしました。村にはライオンが出てくる

昔話が伝承されているそうです。何らかの理由で温暖な地を追われて、競合者のいないはるか北に、安住

の地を築いたのかもしれません。