凍湖の葦

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 女満別湖畔のこのあたりでは、春先に白鳥が群れ、初秋はエゾミソハギが咲いています。いまは静まり

かえって、枯れ葦だけが目立ちます。


 夜中の1時過ぎに目が覚め、次の眠気の潮が満ちるまでと、『「知」の欺瞞』(アラン・ソーカル、ジ

ャン・ブリクモン著 田崎・大野・堀訳 岩波書店刊)を手に取りました。ところが引き込まれ、新聞が

来るまで読み続けてしまいました。

 著者の主張の核心は、雑なまとめですが、こんなことでしょうか。《科学の客観性を完全に論証するこ

とはできない。だが相対主義的言説には異論がある。科学は、宗教、神話、おとぎ話、社会思想などと並

ぶ、時代や社会、個人ごとに、どんな風にでも解釈できる思想のひとつにすぎないと言う類の話は、バカ

げているだけでなくて有害だ。》著者たちは数学に堪能な物理学者のようです。その知識にもとづいて、

詳細に、だが科学者らしい慎重さで、論を進めている、というのがわたしの印象です。

 ラカン、ラトゥール、ボードリアール、ドゥルーズガタリなど、わたしが名前だけは知っている日本

でも人気があった(ある?)思想家たちの文章に見られるインチキが、痛烈に暴き立てられていて、爽快感

さえあります。彼らは、自分でほとんど理解しないか誤解しているかする数式や物理理論を、表現に重み

を与える手段として意図的に誤用していると、されています。それを具体的に、これでもかと言わんばか

りにたっぷりと例を引いて、説明しています。わたしも彼らと似たようなことをしたのではと、後ろめた

さも感じました。

 それでもともかく、わたしのなかの科学への信頼・興味と懐疑主義が対話しているようで、とてもおも

しろかった。別にくらしの役に立つわけではないけれど楽しくて、生きててよかった! って感じ。厚い

本ですから、子どもが好きなお菓子をちびちびかじるように、少しずつ読み進めましょう。お正月が入る

ので、図書館に返すまでの期間が長くなっていてラッキー!