魚無川に若葉が萌える

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 16日の魚無川周辺は、ヤナギのみずみずしい若葉が陽に輝き、盛りを迎えたニリンソウとオオバナノ

エンレイソウが白さを競っていました。林間で澄んだ声でさえずりながら飛び交う小鳥のうち、一羽だけ

が近くから撮らせてくれました。名前はわかりません。


〔新しい文明の姿を考える 〕

(5) 財の自立と近代経営

 産業革命(工業化)は動力機械など新しい技術の発明だけで実現したわけではありません。中世の科学・

技術では西欧は後進地で、アラビアや中国が先頭に立っていました。しかし合理的な知を集成して系統的

にまとめ上げる土壌が先にできたのは西欧です。財の宗教・政治権力からの相対的自立がいち早く進んだ

からです。売って儲ける営みで成功した者たちが、神秘的な要素を含む過去の慣習(古い共同性)に拠る聖

俗の領主たちに、堂々と対抗できるようになりました。最初にイギリスで農地が共同体的しがらみのない

私的所有の対象になって、市場生産を目的とする経営者の手に集積されます。主に自給を目的に生産して

いた自営・小作農民は、土地を失い賃金労働に追い込まれました。

 身分的権力が余剰労働を収受できた中世から、経営者自らが売って儲けるために生産性向上の先頭に立

つ近代に、やがて時代が転換します。科学と技術が転換を援けました。天動説より地動説の方が売って儲

ける活動に役立ったというわけではありません。ただ、神秘的な予言や過去の権威による命令より、合理

的な根拠にもとづく知のほうが、儲けを確実にしてくれるとわかったのです。新しい事業者たちは、科学

やそれにもとづく技術と手を携えて、近代合理思想を普及させました。彼らは収奪する伝統的権威があり

ませんから、賃金給付を対価とする契約を基に、労働者を指揮監督します。互いの人格的自由と法的な平

等がなければ、商品取引契約も雇用契約も安定しません。基本的人権や自由平等の思想は、新しい事業者

の階級が身分制的権力の束縛から自由になるためにも、労働者を雇用して事業を運営するためにも、欠か

せない条件でした。私有財産権が近代人権思想の出発点であったと見ることもできます。法的に守られる

財産権によって、資本をもつ事業主は売って儲ける目的を高らかに謳いあげることができ、無産労働者は

自ら進んで彼らの指揮監督に服することになります。

 かつては生涯の働ける時期をすべて他人に雇われてくらす人は少数でした。農民は、小作人であって

も、自分と家族の生活物資のほとんどを自分で作り、産物と労働時間の一部を地代として地主に差し出し

ます。商人や職人は、初めは小僧や追い回しでも、やがて旦那や親方になる日のために、奉公し修行しま

す。自ら事業主である小生産者が社会の基幹です。身分的に上位の少数者が、伝統的共同性を基に、分散

した小生産者を経済外強制力でまとめる上げる社会構造でした。商人や親方が奉公人を使っていても、そ

の数は現在の会社の社員数にはるかに及びません。いまの先進国では国民の大多数が企業に勤めて賃金を

もらってくらしています。文明の約1万年という尺度で見るとつい最近になって、工業化を達成した国で

この状態があたりまえになりました。

 新興勢力である資本家たちは、科学の発展を歓迎し新しい動力機械を取り入れるとともに、以前と比較

にならない大勢の従業員の労働を効率的に組織するため、経営技術の確立にも努めました。『経営の未

来』(ゲイリー・ハメル/ビル・ブリーン 日本経済新聞出版社 藤井清美訳)は、近代経営管理を「人間

を組織し、資源を分配し、目標を定め、段取りを決め、ベストプラクティスからの逸脱を最小限に抑える

科学」と記述しています(4P.)。またそれは、「複雑な作業を小さな反復可能なステップに分解するこ

と、コストや利益を1セントに至るまで細かく計算すること、何万人もの社員の活動を調整すること、さ

らにはグローバル規模で業務をシンクロさせることなどにも成功してきた」、とも書いています(9 P.)。

身分制的権力からの財の自立を待って、科学に基づく生産技術と大規模経営のための管理技術が大きく発

展しました。売って儲ける営みが陽の当たる場所に出て、科学技術と経営理論を駆使するようになった結

果、労働生産性が飛躍し、文明は新しい段階に入りました。その頂点が20世紀の第二四半期から80年

代までだったと思います。その最終期に日本は、ジャパン・アズ・ナンバーワンという呼称が聞こえる繁

栄を経験しました。(続く)