竜宮街道波白く
の外海は、砕け散る波の白さと海水の緑が印象的です。岸近くの波頭に漂う茶色は、波が巻き上げる砂
に、流氷が運んできたアムール川の泥や養分、それに豊かなプランクトンが混じりあってできるのでしょ
うか。
きのう「ヒト文明はどこから来てどこへ向かっているのか。・・・・・今のところわたしはそういう論考に
出会っていません」と書いた稿をアップした後で、アル・ゴア元米副大統領が主演した映画、『不都合な
真実』を見ました。アジテーションではないかと予断をもっていましたが、意外にさわやかな印象です。
以前NHKが放送した一連の温暖化モノには扇情的ないやらしさがありました。たぶん「中立」への神経
質な気配りと、「危機」を強調したいという気持ちがぶつかって、いやみになったのでしょう。それと、
将来のシミュレーションを映像化しているところに危うさを感じました。ゴアさんの映画は、温暖化問題
解決に役立ちたいという立場を明示しています。しかし、確定した過去から現在までの事実を選択して提
出することが中心で、実際どうなるか不明なところの多い未来については、気温やCO2のグラフ以外、
映像にしていません。彼が映画のなかで訴えたデータや理論には、わたしの知識と矛盾する点がほとんど
ありませんでした。そしてもちろんそのアピール力は、わたしの貧しい文章とは比較にならない力強さで
す。もうわたしは温暖化の危険を訴える文章は書かずに、ただこの映画を見てくださいと言えばいいのか
なと思いました。
ただひとつだけ気になったのは、人為的なCO2増加が温暖化の原因だと断定しているところです。C
O2濃度と気温に相関があること、それにCO2に温室効果があることは、間違いないと思います。しかし
相関の事実それ自体は因果の証明ではありません。他の原因ではじまった温暖化がCO2濃度上昇の引き
金になった可能性を完全に否定する理論には、わたしはまだ出会っていません。とはいえ、出発点の因が
どちらであれ、人間活動がCO2の異常増加を促進していること、その温室効果が温暖化を加速する結果
になることは確かだと思います。IPCCとゴアさんの活動には期待していますから、彼らがノーベル賞
をもらったのはよかった。でも、いくら冷静に客観的なデータを突きつけても、政治の対応が遅々として
いて、大きななうねりが生じない現状には、子や孫の将来がどうなるのかという焦りを感じます。7年前
の大統領選挙で、あとわずかな偶然が作用して、ブッシュではなくてゴアさんの当選が宣言されていた
ら、いまの世界にもっと希望があったのでしょうか。生物史では、ほんの小さな偶然で種の絶滅と繁栄が
分かれるようなこともあるのでしょうね。