凍る能取湖

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 サイタマンさん、わたしの写真よりずっと美しい霧氷の実物をお見せしたいですね。未熟な議論に興味

をもってもらえて、うれしいです。


 予報では1日中零下にはならないようで、能取湖も水面が開いているでしょうか。写真は3月2日のも

のですから、氷で覆われています。


〔親は子を幸せになれるようには育てられない(続)〕

 「いまでは、高い教育を受けた親のほとんどが、子どもの運命は自分の掌中にあると信じている」のだ

から、自分は圧倒的な少数派であると、ピンカーは承知しています。最近の子育て「レシピ」は次のよう

に、「24時間体制の子育てマシーン」になるよう親に求めていると、彼は皮肉っています。色彩豊かな

玩具や多様な体験で赤ちゃんを刺激すべし。話かけや読みきかせをできるだけ多く。親子の交流・コミュ

ニケーションは重要。うるさい指図と放任のどちらもよくない。毅然とした道理にかなった制限を設け

よ。体罰はすべてダメ。子どもに劣等感をもたせる言葉は厳禁。頻繁に抱きしめ、無条件の愛情を示せ。

子どもの生活すべてに関心を抱け。これらを満たして育てれば子は、世間の評判がよく自信をもち、いい

成績できちんと学校を卒業し、ドラッグ・酒・タバコを避け、十代で子どもを作ったりはせず、法律を守

り、幸せな結婚をして職業的にも成功する。

 ピンカーによれば、これらのレシピを広めているのは育児(発達心理学)の専門家です。彼らは、研究の

結果、親の行動と子の行動の相関が明らかである、と主張する。だが相関に遺伝の影響がないかのように

仮定されている。さらに、親の行動と子の両方についての情報を、親または子一人から得ている。親は子

の家庭外での行動を知らない。そして親は、子がうまくいっていれば自分の育て方が正しかったと、子が

うまくいっていなければ自分の育て方が間違っていたと考えやすい。幸せな子は親のおかげと思って、親

の育児を肯定して答え、不幸な子は親のせいだと、親の育児を批判的に答えがちだ。同一人が親と子の両

方の行動を答えるこれらの調査で、相関が見られても意味がない。仮に意味があったとしても、相関は親

の育児が子に影響したことを示すものではなく、子の性格がレシピどおりの、またはレシピに反する親の

行動の原因かもしれない、などと彼は批判しています。

「したがって親が子どもの人格を形成することを示すには、(双生児や養子を対象とすることによって)遺

伝子の影響をコントロールし、親が子どもにおよぼしている影響と子が親におよぼしている影響とを区別

し、親と子を別々に評価し、子どもが家の外でどのようにふるまっているかを調べ、年長の子どもや若年

の成人を調査して影響が一時的なものか永続的なものであるかを見なくてはならない。育児の影響を示し

たと主張するこれまでの研究のなかで、これらの基準を満たすものは一つもない。」(200頁)

 ピンカーは、これらの点で厳密な行動遺伝学の研究から、次のことがわかっていると主張しています。

親が働いているか家にいるか、保育園に預けられたか家で育てられたか、きょうだいがいるか一人っ子

か、正式な結婚か事実婚か、家庭で育ったかヒッピーのコンミューンで育ったか、受精がたまたまでも計

画的でも試験管の中でも、両親が男女でも同性でも、他の条件が同じであれば、子どもの育ち方はほとん

ど変わらない。父親が初めからいないか家を出ているかした場合だけ、相関が認められるが、死別だと影

響はなく、父のない子が生まれたり父がいなくなったりするケースが多い貧困などの環境が真の原因と思

われる。

 親の育児態度の影響を否定的に評価する意見が世間で圧倒的に少数派なのは、理想主義的だったり政治

的に左派寄りだったりする人は遺伝の強調に反感をもち、保守的な人は伝統的な家族像に執着して子育て

の責任を家庭に負わせ社会的責任を免れようとするからだと、説明されています。

彼は子どもに養育者が必要なことを否定しているわけではありません。ただ養育者が血縁のある親でなけ

れば将来子が不幸になるわけではないとは、言っています。わたしが思うに、実の親でも養い親でも施設

でも、必要な栄養、健康を守ることができる住居・衣服・医療、仲間とふつうに付き合える玩具やお小遣

い、本人が望む教育の費用を提供していて、虐待をしていなければ、子の将来に養育者の責任はありませ

ん。子どもの将来に幸せと成功を約束するような子育てレシピ作成は原理的に不可能です。

 子どもとの情緒の交流は、子どもの将来の成功のためにではなく、いまと将来のいい親子関係のため

に必要なのです。やさしく育てられた子はたいてい老親にやさしい。将来成功するように育てるのが自分

の責任だと必死になる親は、子どもと一緒のくらしを楽しむゆとりがなくなります。遺伝子を改変したデ

ザインド・ベビーには反対する人が多いでしょう。そういう人が育て方で子どもをデザインしたがるのは

おかしいと思いませんか。(このテーマ終わり)