サロマ湖 人入れ稼業(前)

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 リンデンさん、あの草葺屋根の小屋陰から、獣皮をまとって石槍を持った縄文人が現れたら、面白いで

しょうね。北欧のサンタクロース村みたいに、体験観光の縄文村を作ったらいいのに。メニューは石器作

り、土器作り、貝拾い、山菜料理、鹿狩りなど、いろいろ考えられますよ。


[人入れ稼業(前)]

 北見・網走地方で各家庭に毎日配られるタウン紙は無料ですから、制作や配布の費用をまかなえるだけ

の広告収入があるわけです。広告の半分以上が求人で、その大半は道内や、愛知を中心とする内地に、人

を送る請負・派遣業者のものです。27日付の紙面には、人材業者の名前が12社ほどありました。勤務

が北見周辺だと、時給は650円とか700円が多くなっています。遠方で働く場合は車やハイテク製品

の組立工場が中心でしょうか。月収30万前後を謳っていても、たいてい45時間以上の残業と、例えば

62.5時間の深夜勤務を含めたものです。広告には書いてありませんが、宿舎代や作業着代などを引か

れるようです。手数料を含め、メーカーから業者に支払われる金額の何割が本人の手に渡るものなのか。

道東地域の全戸に配られる無料紙を維持できるほど、現代の人入れ稼業は儲かっています。大資本の系列

もどんどん参入しているとか。

 昔、アフリカで狩り立てられた黒人が、合衆国で奴隷として働かされました。日本でも、領主の負け戦

で庇護を失った村人が、戦利品として捕獲され、人買いに売られる時代がありました。戦前の日本では貧

しい農民の娘が親に、繊維工場の女工や女郎として、売られることも珍しくなかったそうです。40年ほ

ど前にわたしも、こんな経験をしています。当時は仕事の関係で、ノーネクタイで昼間の浅草映画館街を

通ることがよくありました。するとたびたび、男がそっと近づいてきて、「ニイチャン、いい仕事がある

よ、」とささやくのです。どこかの組に仕切られた手配師だったのでしょう。わたしが乗り気な態度を見

せたら、やくざや男の懐に入る金額を借金として背負ってどこか山奥の飯場に送られ、暴力の威嚇で強制

労働をさせられたと思います。

 戦後日本ではずっと、他人の労働力を売って儲けるのは人身売買を思わせ、民主主義社会では許されな

いと考えられてきました。一部特殊な職種を除き、職業紹介業は民間には禁じられた犯罪だったのです。

それが小泉内閣により「規制緩和」の名の下で解禁され、いま人入れ稼業が大繁盛です。安倍首相は「戦後

ジームからの脱却」を掲げています。キャノンの御手洗会長は06年の経済財政審議会で、「派遣社員

請負社員のおかげで、日本の産業の空洞化がかなり止められている」、と発言したそうです(朝日新聞社

『ロストジェネレーション』24頁)。彼の会社は偽装請負がらみで、労働局から7回の文書指導を受け

たとか(同前)。その彼がいま、日本経済界トップの日本経団連会長として、安倍自民党政府とタッグを組

んでいます。(つづく)