庭の花 日本の右傾化 5
団でひたする高みを目指しているときは、途中の景色を気ままに楽しむことはなかったかもしれないね。
今日の写真は6月初めにウチの庭に咲いていた花の一部です。順に、トマト、イチゴ、花ショウブ、ス
ミレ、ハイキンポウゲ。もうすぐ芍薬が開花するでしょう。
〔日本の右傾化 5〕
日本でバブルがはじけたころ、サッチャーの新自由主義改革の進展と並行して、イギリスの経済競争力
が回復しつつあった。彼女の思想は欧州各国とアメリカの経済政策に影響を与えた。国内の政治・経済・
言論各界指導者は、日本的システムに自信を失い、新しい国際潮流に関心を向ける。小さな政府による福
祉・公共サービスの縮小、大幅な規制緩和・市場原理主義である。欧米から国境を超えた資本移動に対す
る規制撤廃を迫られる。貿易自由化が進み、労働力の国際移動も多くなる。取引する物の量を増やすよ
り、製品に情報を付加したり、情報そのものやサービスを取引したりするほうが、経済効率がいい時代が
はじまっていた。新自由主義思想、経済のグローバル化、生産と消費の情報・サービス化が、日本社会を
揺るがそうとしている。
バブルに至る日本の経済成長を支えた一つの条件は、相対的に欧米より低い労賃だった。だが中堅労働
者の生活水準が向上して以後、このメリットは、中進国、途上国のものになる。もう一つは、人的結合を
支えにまとまる縦系列の競争を、政・官・財界トップが調整する日本的システムだった。集団指導社会主
義とも言えそうなこのシステムは、工業生産の効率化には有効だった。だが、市場原理主義・グローバル
化・情報サービス化では、個人の自主自尊を重んじる欧米精神風土の方が有利である。
金融市場に投じる資産をもつ者と、専門分野で創造力を発揮できる知識・技能を得た者は、世界経済の
新しい構造で、より豊かになるチャンスが増える。だが、単純労働に従事する労働者は、途上国の産業や
移入労働者に地位を脅かされる。欧米では、彼らの不安が極右勢力拡大の背景である。日本ではこの階層
を超えて、従来の指導者層にまで不安が広がっている。経済構造の改革が伝統的な序列秩序を崩壊させる
可能性を感じるからである。
サッチャーイズムとイギリスの経済回復の因果関係には、疑問の余地がないわけではない。だが日本で
はいまのところ、両者を短絡する見解が圧倒的に強い。グローバル化と情報サービス化は経済的現実であ
る。この現実に乗り遅れないために新自由主義政策を強行しなければならないと考える。その一方で、上
位者の恩恵と下位の者の服従で結びつく伝統的秩序も維持したい。指導者層の保守化は、相容れない二つ
の志向を「和魂洋才」の再現で乗り切ろうとするあがきである。世界経済の新しい構造がもたらす個人主
義の深化が、社会秩序を混乱させるのを、イデオロギー統制で抑えたいのである。(つづく)