フィンランド・モデルは好きになれますか 24

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第一部
 写真は北見フラワーパラダイスの眺望とバラです。

第二部
フィンランド・モデルは好きになれますか 24
3 フィンランド人の精神生活
(2) 個人としての個人(承前)
〔くらしの楽しみ〕
子どもの学費は心配しなくていい。老後の最低保障はある。妻もたいてい稼いでいるから、妻子を養う責任は夫の肩にだけ重いわけではない。フィンランドは自由にくらせる人が日本より多いだろう。では彼らはどのようにそのくらしを楽しむのか。
この国の21校の大学はすべて国立で、そのうち4校が絵画芸術院、音楽院、演劇専科大学など芸術専科だ。スポーツは大学だけでなく職業学校でも学べる。芸術・スポーツ系の学部は人気が高く、そこをめざす人のために特別コースを設けている高校も少なくない。芸術・スポーツ系の職業を目標にする生徒は、数学を重点的に学んで情報産業や研究職をめざす生徒と同じように、教師や親から期待されるらしい。序列意識の強い日本とちがって、高い地位や収入を目指す競争に乗り出す前に、自分に適した、自分が好きになれる職業を探そうと力を注ぐようだ。人口が日本の4%程度のこの国で、世界的に名の知れたアスリートは日本より多いのではなかろうか。特に冬季オリンピックでの活躍は目覚しい。
芸術・スポーツ分野は裾野が広く、頂点に立って活躍しなくても就業機会は十分ある。音楽セラピーはケア産業で重要な役割を担っている()。体育学部にはAPA専攻、コーチング専攻、青少年の身体教育専攻、レジャースポーツ専攻のコースがある。APAは障害者スポーツと訳されるが、障害をもっていない人や高齢者をも対象としていて、そのインストラクター有資格者は、たいていの市町村に複数のポストがあるという()。2-(1)で言及した藤井はこう書いている。

  タンパレ市には二つの大きな学習センターがあり、年に2回、各センターから分厚い冊子が地方紙
にまざって家庭に届く。芸術・言語・スポーツ・音楽・学問など、あらゆる分野の教室やサーク
ルが低料金で提供され、乳幼児からお年寄りまで、気楽にそれを利用し楽しむことができる。(中略)
  人口520万人のこの国で、成人教育に150万人を超える国民が参加しているという(後略)。

1-(3)で触れたように、フィンランド人の年間労働日数はほぼ7ヶ月である。そして残業はあまりしないらしい。日本ではどうか。ほとんど残業はなく、完全週休二日で祝日はすべて休み、お盆と年末年始にあわせて10日の休暇をとるのは、少数の恵まれた人ではなかろうか。彼らの場合で労働日は235日。フィンランドでは日本の恵まれた勤労者より約一ヶ月少ない。ゆとりの時間を文化・芸術・スポーツに費やす人が多いから、それらにかかわるサービス産業が栄える。
日本人の4%の人口がほぼ日本と同じ広さの国土に住む。四分の三は荒野の原生林である。都市に住む人が多いとはいえ、野外活動はくらしの楽しみの大きな部分を占めている。森を散策し、湖水で泳ぎ、ベリーやきのこを摘み、長い冬はスケート、氷上釣り、クロスカントリーを楽しむ。一ヶ月の夏休みには国民の半数近くが別荘でくらす。
(この項続く)