フィンランド・モデルは好きになれますか 17

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第一部
 今日の写真は朝焼け空の続きです。

第二部
           フィンランド・モデルは好きになれますか 16
2 フィンランド人の一生
 (4)社会人・納税者として、そして老齢期
 〔医療・介護と年金〕(承前)
 阿鉢韻鬚發箸法地方自治体や保険を含む、社会保障給付金全体を比較する。フィンランドは03年、日本は02年である。一人当たりというのは、総額を国民の数で割ったものだから、たとえば年金受給者が一人いくら受け取るかを示すものではない。
                   表  6
                フィンランド        日本
   医療費(一人当たり)     23万4975円      20万5748円  
    医療費の割合         24.3%        31.4%
   年金(一人当たり)      31万1200円      34万7518円
    年金の割合          32.2%        53.1%
   福祉・その他(一人当たり)  42万1725円      10万2734円
    福祉・その他の割合      43.5%        15.5%
   合計(一人当たり)      96万7900円      65万6000円
                   100%         100% 

 福祉・その他は、貧窮者・傷病者・障害者・失業者・子どもや家族などへの、生活保障や支援だ。その項目でフィンランドは日本の約四倍である。表3で見たように教育費の国家負担もフィンランドは日本のほぼ三倍で、無償教育と手厚い就学支援があった。親の経済力で教育機会の有利・不利が決まれば、競争のスタート・ラインが不公平になる。つまずいたときのセーフティー・ネットに不安があれば、思い切った挑戦はできない。日本は、財政赤字を考えなければ、国民負担は平均でフィンランドの半分ほどだ。高収入者の負担割合はもっと小さくなる。フィンランド国民の多数は、公平で効率的な競争を保障するために、大きな負担を受け入れている。
 日本では、家庭環境や教育機会に恵まれなかったり、生まれながらのハンデがあったり、傷病で働けなくなったり、リストラされたりすると、不公平な条件での競争を強いられる。条件の厳しさにあきらめれば意欲が腐り、教育や再起の機会が得られなければ才能が埋もれる。競争は不公平になり、経済の効率化が妨げられる。勝ち組でない親は、子どもの教育費を負担し老後に備える、個人的責任に圧倒されている。気持ちにゆとりがなく、冒険をしたがらない。国は巨額の財政赤字を抱え、老齢者への年金支払いにアップアップしている。看護師の数で見たように、医療にも問題がある。赤字財政の負担とさらに進む高齢化を考えれば、ますます希望をもてない。
 高齢者も、厚生年金(+国民年金も含め)受給者の何割かは、フィンランドの平均的な高齢者より経済的に恵まれているだろう。現役のとき競争で優位に立ち、高収入だった人は、十分な年金や資産で老後を悠々とくらせる。だが、約4割の国民年金だけを受給している人や、厚生年金額の低い人のほとんどは、老後の家計が不安である。そして勝ち組でない現役世代、勝ち組になる見込みをもてない若者は、絶望をつのらせる。絶望と不安は偏見・煽動の栄養であり、社会を不安定にする。豊かな少数者は、富の力が脅かされない秩序を求めて保守化したり、国外への脱出を考えたりする。
 (この項続く)