フィンランド・モデルは好きになれますか 8

イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

第一部
 子どものころ新潟県の信州に近い山村で6年ほど暮らした。いまは合併で津南町になったが、そのころは蘆が崎村だった。林の奥深いところに水の澄んだ池があって、確かではないが、龍が窪と呼ばれていたような気がする。関東に住むようになってから、この池が名水として有名になったと聞いたが、当時子どもだったわたしには、暗く気味の悪いところという印象が強かった。あちこちの田舎に、木立に囲まれて「神」とか「龍」とか名前についた池がけっこうありそうだ。神の子池も、車でかんたんに行けず、山や森を踏み分けてたどり着いたのなら、その名の由来がもっと身に沁みたかもしれない。

第二部
            フィンランド・モデルは好きになれますか 8

 2 フィンランド人の一生
  (1) 胎幼児期
 フィンランド合計特殊出生率は、このところ毎年上昇し、04年は1.80である。一人の女性は平均すると1.80人の子どもを生むということだ。日本は依然として下降し続け、05年には1.25。フィンランドの子どもは、母親の胎内にいるときから、公的機関、親の職場、街の人々に手厚く保護される。親がシングルでも、同棲でも、学生でも、無職・無収入でも、生まれ育つ子どもはハンデキャップを負わない。一時期落ち込んだ出生率がようやくここまで回復してきた最大の理由は、親になる人がこの点に不安をもたなくなったことではなかろうか。
 資料によれば、この国の全世帯のうち、結婚している夫婦と子どもの世帯は37.7%、母親と子どもは11.5%、同棲カップルと子どもは7.1%、父親と子どもは2.1%である。シングル・マザーや事実婚でも子どもが育てやすい社会でないと、この数字にはならないだろう。
 15歳から64歳の女性のうち就労している人の割合は71.2%で、その平均収入は男性の82%である(から)。さらに、濱田徹の「フィンランドの育児事情」(ネット)は、次のことを伝えている。7歳以下の子どもをもつ女性の四分の三はフルタイムで働いている。三歳未満の子どもをもつ両親のどちらかは育児休暇をとることができて、その間の解雇は理由のいかんによらず禁じられ、復職後は以前と同じか同等の地位が保障される。産休や育休で収入がなくなると、母親補助、父親補助、両親補助と呼ばれる補助金が支払われる。「フィンランドの家族政策と教育制度」(矢崎化工株式会社の福祉講座―ネット)によれば、産休・育休は263日まで所得の66%が保障され、その後無給期間(3歳まで)に家庭で保育すれば、家庭育児手当が支給されるという。
 資料Г法▲侫ンランド・タンペレ市に住む日本人女性、藤井ニエメラみどりという人が、出産・育児体験を書いている。以下はその中から。
 フィンランドでは出産を迎えるすべての女性に、国民保健省から母親支援キットが無償で送られてくる。重さ8キロの頑丈な箱で、中には、赤ちゃんの衣料・寝具類、オムツ類、おもちゃ、絵本、生理用ナプキン、避妊具などなど、初期の育児までに必要なあらゆる品が詰め込まれている。そのつもりなら箱をベビーベッドに使うこともできる。出産が迫ると、妊娠期間を管理する保健センターから、居住地区の指定公立病院にデータが移され、そこへ入院する。病院は、母親が快適に過ごせるように、一人ひとりの食べ物や飲み物などの希望も考慮してくれる。出産後は母子同室で、看護師に預けるように希望したとき以外は、母親が新生児のベッドを押してどこにでも移動する。藤井は、「私は全体をとおして、個というものを柱に各人の子育てが機能していくようサポートするのが、ここフィンランドの産院のあり方なのだと感じ取った。」と書いている。病院への支払いは全部で約1万3500円。
 (この項続く)