フィンランド・モデルは好きになれますか 9

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第一部
 裏摩周を離れ、小清水海岸と濤沸(とうふつ)湖へ移動すると、一転して開放的で観光客のにぎわう風景になります。国道沿いには、道の駅、センター、湖側の道路に一箇所の、三つしか駐車場がありません。湖畔のポニーが何頭か見える一帯には、ヒオウギアヤメの紺色が広がっていましたが、車で通り過ぎただけです。遊歩道がしつらえられた原生花園の面積は広くないのですが、そこから網走に向かう道路の海岸側には、見事なエゾキスゲの群落が広がっています。路肩に停まっている車もありましたが、高速の車が行きかう道路沿いに駐車したくないので、ここも走りながら眺めただけです。離れた駐車スペースに車を置いて、歩道を歩いて撮影している人もいました。
 湖畔に不思議な建物がありました(写真)。道路際から建物まで木道が見えているのですが、周りを有刺鉄線で囲ってあって、木道への入り口が見当たりません。草むらを横切り有刺鉄線をまたいで、建物へ行って見ました。木製の展望台です。屋根には土が盛られてエゾスカシユリなどの花が咲いています。濤沸湖越しに見える藻琴山の写真を撮りました(三枚目)。

第二部
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2 フィンランド人の一生
 (1)胎幼児期(承前)
 入院前も退院後も、保健センター(ネウボラ)の「母と子のネウボラ」が、父母へのカウンセリングや健康診断、子どもの健康ケアを行う。所属の保健師は各家庭を巡回する。妊婦や子どもはセンターで無料の治療や歯科治療を受けられる。子どもの就学後は、ネウボラに保管された膨大な記録のうち、必要な情報は学校に引き継がれる。
 働く両親でも学生でもシングル・マザーでも子育てができるように、自治体には保育施設を整備する義務がある。自治体は、昼間あるいは午前または午後のデイケア、24時間保育、夜間保育、アレルギーなど特別ケアが必要な子のための保育施設、保育師が自宅で数人を預かる家族デイケアなどで、さまざまな需要に応えている。だからシュタイナー教育のような独自な理念を掲げる機関のほかには、ほとんど私立保育園はない。
 「フィンランドの家族政策と教育制度」(前出)によれば、子ども対保育師の割合は、0から3歳児で4:1、3から6歳児で7:1、健常児と障害児の統合保育では3:1+必要なセラピスト。保育料金は有料で、両親の収入と家族構成で差があり、最高が2万5000円程度。すべての子どもは16歳になるまで児童手当を支給される。
 家庭育児を行う人には、設備の整ったプレイグラウンドがあり、指導員もいて、監督をゆだねることができる。生涯学習センターには、赤ちゃん体操、音楽教室、工作教室など、乳幼児のいる家族に人気のあるプログラムが用意されている。図書館には専属司書のいる子ども向けコーナーがあり、人形劇や読み聞かせも行われる。フィンランドではコンピュータ・ゲームのように現代的な娯楽は日本と同じだが、その他に幼児からから老人まで、盛んに野外活動を楽しむ。湖水浴やハイキング、ベリー摘みやきのこ取り、アイススケートクロスカントリーなど。ハーラリーという防寒服があり、冬でも積極的に外遊びができる。冬でも赤ちゃんを乳母車ごと外に出して日光浴をさせ、昼寝をさせる習慣がある。雨やみぞれの秋には、特製の泥んこ服で外遊びをする。
 タンペレ市には段差がなく乳母車専用スペースのあるバスが走っている。段差のある古いバスだと、まわりのだれかが手伝って持ち上げてくれる。レストラン、駅のホーム、ドア前、階段でもさっと手を差し伸べてくれる人が多い。藤井はこう書いている。「単に物理的な面からだけでなく個人の意識レベルにまで浸透した社会サービスの奥深さに感心させられる。」「子どもの世話やしつけを「保育園と家庭の共同作業」と考えるこの国では、一人ひとりの子どもの成長に対して、社会が家庭と同等の責任を持ち、よりよいサービスの提供をめざしている。」(この項終わり)