雪も氷も
単調に見える雪や氷でも、切り取り方によってはおもしろい模様になります。工業製品とちがう自然の
作品は、完全に同じものは二つとないですね。人の手作り品もそうですけど。人は機械ではなくて自然の
一部ですから当然かな。
〔ムダの効用〕
7 北海道の魅力
道外から来る観光客にとって、北海道の最大の魅力は豊かな緑と水、広く大きな景観だと思います。し
かし住み着いて4年にもなると、その限界にも気づかされます。緑と水は劣化しています。2003年ま
でに土地の15.0%が耕地に変わっており、耕地率は全国平均の12.7%を上回っています。北海道
と同じように宅地割合が小さい東北地方でも耕地は、岩手が10.3%、福島が11.3%、秋田と山形
が13.4%です。林野面積割合が大きい都道府県順位では、北海道は17位になりました。(以上は農
水省第79次統計表から) 石狩川は深川市下流以下が極端に直線化されて57%短くなり、石狩平野の
豊かな湿原は消滅しました。釧路湿原も釧路川の直線化で乾燥が加速されています。
景色が大きいと言っても本州と比較してのことで、例えば晴れた日に細丘展望台に立って釧路湿原を眺
めると、阿寒の山々に視界を遮られ、釧路市街の建物群が目に入ります。広大さという点では、アフリカ
や中央アジアの砂漠、モンゴルやアンデスの大草原には及ぶべくもありません。それでも本州ぐらしが長
かったわたしは、北海道の自然に伸びやかさと奥深さを感じ、限りない愛着を覚えています。
北海道の広さを感じるのは、街を外れたときです。北海道の人口密度は日本の都道府県で一番小さく、
1平方キロあたり67人です(全国平均は340人―ともに05年)。しかも人口集中地区割合(市町村中心
地区への集住度)は首都圏、愛知県、京阪神を除いて最大の72.7%(全国平均は65.2―05年)で
すから、一歩街を出れば、人の気配が希薄な大地が広がることになります。わたしは林道を2,30キロ
走ってまったく建物を見ず対向車にも出会わないとか、りっぱに舗装された道道や市町村道を数十分走っ
て、行き交う車は数台というような経験を何度もしています。
深さを感じるのは、街中の公園でさえエゾリスやさまざまな水鳥・小鳥と出会え、郊外ではワシ、キツ
ネ、鹿などがよく目につき、川や湖に豊かな魚影があるから。そして冬の乾いた低温が、氷河時代につな
がる植物など、多様な草花を残存させているから。屈斜路湖で鱒を、能取湖でアサリを、オホーツク海で
サケ、カレイ、ホッケを獲るのに、漁師でなくても入漁料はいりません。それらは新参者のわたしのとこ
ろにも届いたりします。フキノトウ、コゴミ、フキ、ワラビ、自生クレソン、山ワサビ、山ゼリ、山ミツ
バは、自分で採ったり、近所の人にもらったり、産直店で安く買えたりして、わたしの口にも容易に入り
ます。要するに生物多様性とその恵みを目と舌で実感する機会が多いのです。
こういう広さ・深さを延長すれば、大陸北方につながる陸橋を渡って来た旧石器人、島になってからの
縄文人、続縄文人、オホーツク文化人と擦文文化人、それにアイヌがくらしてきた、緑と水が劣化する前
の自然環境に思いが行き着きます。北海道という土地で最大の潜在的財産は、近代以前の、いわば縄文的
な歴史につながるものが多く残っていることではないか、最近わたしはそう感じています。(このテーマ
続く)
作品は、完全に同じものは二つとないですね。人の手作り品もそうですけど。人は機械ではなくて自然の
一部ですから当然かな。
〔ムダの効用〕
7 北海道の魅力
道外から来る観光客にとって、北海道の最大の魅力は豊かな緑と水、広く大きな景観だと思います。し
かし住み着いて4年にもなると、その限界にも気づかされます。緑と水は劣化しています。2003年ま
でに土地の15.0%が耕地に変わっており、耕地率は全国平均の12.7%を上回っています。北海道
と同じように宅地割合が小さい東北地方でも耕地は、岩手が10.3%、福島が11.3%、秋田と山形
が13.4%です。林野面積割合が大きい都道府県順位では、北海道は17位になりました。(以上は農
水省第79次統計表から) 石狩川は深川市下流以下が極端に直線化されて57%短くなり、石狩平野の
豊かな湿原は消滅しました。釧路湿原も釧路川の直線化で乾燥が加速されています。
景色が大きいと言っても本州と比較してのことで、例えば晴れた日に細丘展望台に立って釧路湿原を眺
めると、阿寒の山々に視界を遮られ、釧路市街の建物群が目に入ります。広大さという点では、アフリカ
や中央アジアの砂漠、モンゴルやアンデスの大草原には及ぶべくもありません。それでも本州ぐらしが長
かったわたしは、北海道の自然に伸びやかさと奥深さを感じ、限りない愛着を覚えています。
北海道の広さを感じるのは、街を外れたときです。北海道の人口密度は日本の都道府県で一番小さく、
1平方キロあたり67人です(全国平均は340人―ともに05年)。しかも人口集中地区割合(市町村中心
地区への集住度)は首都圏、愛知県、京阪神を除いて最大の72.7%(全国平均は65.2―05年)で
すから、一歩街を出れば、人の気配が希薄な大地が広がることになります。わたしは林道を2,30キロ
走ってまったく建物を見ず対向車にも出会わないとか、りっぱに舗装された道道や市町村道を数十分走っ
て、行き交う車は数台というような経験を何度もしています。
深さを感じるのは、街中の公園でさえエゾリスやさまざまな水鳥・小鳥と出会え、郊外ではワシ、キツ
ネ、鹿などがよく目につき、川や湖に豊かな魚影があるから。そして冬の乾いた低温が、氷河時代につな
がる植物など、多様な草花を残存させているから。屈斜路湖で鱒を、能取湖でアサリを、オホーツク海で
サケ、カレイ、ホッケを獲るのに、漁師でなくても入漁料はいりません。それらは新参者のわたしのとこ
ろにも届いたりします。フキノトウ、コゴミ、フキ、ワラビ、自生クレソン、山ワサビ、山ゼリ、山ミツ
バは、自分で採ったり、近所の人にもらったり、産直店で安く買えたりして、わたしの口にも容易に入り
ます。要するに生物多様性とその恵みを目と舌で実感する機会が多いのです。
こういう広さ・深さを延長すれば、大陸北方につながる陸橋を渡って来た旧石器人、島になってからの
縄文人、続縄文人、オホーツク文化人と擦文文化人、それにアイヌがくらしてきた、緑と水が劣化する前
の自然環境に思いが行き着きます。北海道という土地で最大の潜在的財産は、近代以前の、いわば縄文的
な歴史につながるものが多く残っていることではないか、最近わたしはそう感じています。(このテーマ
続く)