タンポポ ニューロン再生の条件

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 在来植物の脅威として敵視されているセイヨウタンポポです。管理者のいる原生花園など、除去の努力

が行われているところもあります。でもたいていの空き地や公園は旺盛な繁殖力に蹂躙されています。在

来外来を意識しなければきれいな花です。来たくて来たわけではなく、たまたま芽吹いた土地で生き物の

本能のままにがんばって繁殖しているだけなのに白眼視されるなんて、人間なら差別するな!と叫ぶとこ

ろでしょう。とはいえ、貴重な固有種の絶滅も座視できませんし。


 20年ほど前、わたしが脳関係の本を集中して読みはじめたころ、「ニューロンは再生しない」が定説で

した。胎児期に増殖が終わり、出生後は死ぬまで毎日減り続けるだけで、新生することはないとされてい

たのです。ところがそれから数年後に哺乳動物の成体で、海馬などに神経細胞が新生すると証明され、1

998年にはヒトでも確認されました。

 「日経サイエンス」09年6月号にT.J.ショアが、マウスなどげっ歯類のニューロン新生について、

最新の知見を紹介しています(「新生ニューロンを生かすには」)。それによると:ラットの海馬では毎日5

000から1万個のニューロンが新生している。だがその大部分は数週間で消滅する。ただ難易度の高い

学習を課した個体ではあまり消滅せずに既存の神経回路に組み込まれる。ニューロン新生を阻害する実験

では、学習能力そのものは低下しなかったが、難易度の高い刺激関連付けの学習には問題が生じた。

 ショアは、新生ニューロンが消滅せずに成熟すると、既存の問題解決能力の調整・強化に使われる、す

なわち「学習のための学習」に役立つのだろうと、推定しています。運動、抗うつ剤投与、ブルーベリー

摂取は脳細胞発生を促す効果があり、アルコールとニコチンは阻害するのだそうです。さらに、ヒトでは

ガンの化学療法が学習困難や物忘れをもたらすことがあるのも、神経細胞再生が妨げられるからではない

かと、彼は考えています。この場合、日常生活にも人付き合いにもほとんど問題が起きないので、ただ難

易度の高い学習、例えば新しい情報を処理しながら多数の課題を並行してこなすような作業が妨げられる

のだろう、と。

 わたしの場合、椎間板ヘルニアと右脚の関節痛で運動が困難になっています。ブルーベリーは食べない

し、抗うつ剤も服用していません。ニコチンには完全にアディクトして(依存症になって)います。ほとん

どストレスのないいま、アルコールは控えるのに特に苦痛はありませんが、毎晩定量をたしなむのが習慣

です。さらにすでに1年半抗がん剤を続けています。ただでさえ老化で細胞新生能力が劣化している上に

これですから、高度情報処理能力は損なわれているにちがいありません。

 せめて難易度の高い課題に挑むことで、わずかに新生するニューロンを失わないように努力しましょ

う。アルツハイマーはいやですから。ブログに固い話題を取り上げるのは、日常生活や風物を話題にする

よりずっときつい作業です。というわけで、ときどき時事的あるいは思想的テーマでも書きますので、痴

呆防止への協力と思ってお付き合いください。