夜明けの山と公園

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 今日の写真は月初めの冷え込んだ日、陽の出前に撮った藻琴山と公園です。

 きのう朝、土手の樹氷がきれいでまたシャッターを押してしまいました。帰ってガレージの温度計を確

かめたら-17度だったのに、ダイヤモンドダストはまったくなし。車のフロントガラスには小さな氷紋

が散っていたものの、家のガラスに着いた模様は貧弱でした。湿度が低かったのでしょうか。


 小説の楽しみを堪能できました。小川洋子の新作『猫を抱いて像と泳ぐ』(文藝春秋社)です。

 チェス盤の下に潜み人形を操って駒を進める主人公は、体を自らの意志で少年の大きさにとどめていま

す。彼は生まれたとき、閉ざされたままだった唇を切開され、脛の皮膚を移植されています。年齢ととも

にその産毛が濃くなっていきます。彼の心を支えるのは、チェスを教えてくれた元バス運転手で超肥満の

寮管理人、その飼い猫のポーン、デパートの屋上でエレベーターに入れないまで大きくなって、そこで一

生を終えた象のイメージ、狭い壁のあいだに入り込んで出られないままミイラになったという言い伝えと

重ねあわされている少女、彼がチェスで生きる機会を提供する老婆令嬢、それに祖父母や弟などです。

 どこかに異形をもつ人々、あくまで静かな動物たち、それにチェス人形。ファンタジックにもおどろお

どろしくもすることができる道具立てでありながら、小説は終始静寂のなかで語りつくされます。この静

寂と主人公が心のなかで死者たちとしみじみ交わす会話が、わたしにはもっとも魅力的でした。ミイラと

いう言葉からその意味を削ぎ落としたとき、か細い少女のイメージにふさわしい音が残る、作者がそう思

いついたとき、物語が立ち上がったのではないか、そんな空想をしました。