ニラの花 人入れ稼業(後)

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 裏の家の奥さんからもらったニラが白い花をつけました。きれいなものだったんですね。


[人入れ稼業(後)]

 こちらのチラシでよく見る時給700円のくらしを計算してみます。いまタテマエとして標準化されて

いる労働時間は、1日8時間で土日が休み。祭日が14日で年休が最低10日です。年間労働時間は23

7(日)×8時間。それに700円をかけて年収は132万7200円、月に11万600円になります。

タテマエどおりなら、時間的にはまあ健康で文化的な最低限のくらしが成り立ちます。しかし、ワンルー

ムのアパートでもだいたい4万円前後ですよ。持ち家なら減価償却費と維持補修費がこの金額を上回りま

す。あと電気・ガス・水道電話代に国民年金・健康保険料やテレビ視聴料。電車代もかかるし、着るもの

履くものもまったく買わないというわけにはいきません。何より食費が必要です。月収11万円では、い

くら物価が安いこの辺でも、自分ひとりが生きていけるかどうか。ちなみに、今年値上げされた最低賃金

の全国平均は687円です。

 9月3日月曜日のタウン紙で見た、本州の自動車関係工場で働く「契約スタッフ」を募集する2業者の

広告では、月収27.1万円と30.5万円の数字が強調されていました。気をつけて見ると小さく「残

業・諸手当含」とあります。残業と諸手当の内実がわかりません。同日の道内での募集を参照しましょう

う。20.4万円の月収に、残業30時間、深夜勤務60時間、休日出勤16時間が含まれていました。

実働9時間20分(食事休憩や通勤や就業準備を考えると11時間を上回る)で、3日に一回の深夜勤務を

含めて月に23日働けば、なんとか人なみのくらしができそうな収入になります。

 冷凍倉庫やハイテク工場のような、湿度・温度・清潔度を扱うモノに合わせて管理する職場が増えてい

ます。そういう非人間的な環境は、人の心と体に大きなストレスを与えるそうです。でも、過労や病気や

のことは考えない。契約はいつ打ち切られるかわからないから稼げる間に稼ぎ、派遣は日雇い(携帯派遣)

でも何でも口がかかったら飛びつく。そうやって平均して月に23日、一日に11時間以上を仕事に使う

チャンスを確保しないと、まともに生きられない。そういう人がいまでは全就労者の3分の一。06年7

月、「大分キャノン」の工場では、労働者の8割が非正社員だったそうです(『ロストジェネレーション』

23頁)。

 04年度の有効求人倍率ベスト3は、東海(1.22)北陸(0.99)関東甲信(0.94)で、ワースト2が沖縄(0.4

0)北海道(0.54)です(『格差社会橘木俊詔 岩波新書 108頁)。北海道・沖縄のように10人の求職

者のうち4,5人にしか職のない地方から、ハイテク工場の多い地域に人を送るのに、人入れ業者が大活

躍しています。2000年の数字ですが、OECDの発表によると、日本の貧困率は先進主要国の中でア

メリカ(17.1)に次いで高い15.3%です(『階級社会』橋本健二 講談社95頁など)。100人のうち

15人は貧しくて人なみのくらしができないのです。貧困率はフランス(7.0)の2倍を超え、スウェーデ

ン(5.3)の約3倍になっています。07年現在では日本の貧困人口はさらに増えているでしょう。アメリ

カでは大量の不法入国者が、労働市場最底辺の中心にいて、過酷な労働を担っています。日本では正社員

になれない3分の一の非正規就労者と、南と北の地方に特に多い失業者が、一番過酷な労働と貧困に追い

込まれています。そして彼らの存在が、正規労働者の、低賃金と長時間労働を拒否できない状態を作って

います。

 国民の大多数を占める労働者がくらしに時間と収入のゆとりがなければ、国内情報・サービス産業が足

を引っ張られます。そこで、経営者は輸出で稼ごうと、コスト削減のため非正規労働への依存を強めま

す。ゆとりのない国民が増えるから、情報・サービス産業が発展しません。日本は悪循環の泥沼に足を突

っ込んでしまいました。この泥沼で儲かるのが人入れ稼業です。