ツツジ 海洋脱酸素化

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 エゾエンゴサクの写真、コントラストを強くしすぎたかな。たしかに肉眼ではもっと地味だものね。も

う少し咲きそろったらまた撮りましょう。露出を二段ほど落として、コントラストを弱く処理します。今

日はようやく開きはじめたツツジです。せせらぎ公園のエゾムラサキツツジの並木に、白い花が一株。ま

ずはそちらを。


〔海洋脱酸素化〕

 ここ6億年間の生物大量絶滅の回数は、論者によって5回、7回、22回とばらついている。原因につ

いても、6千5百万年前の事件(恐竜時代を終わらせた) は地球外小天体衝突説が有力だが、それ以外で

は諸説が入り乱れている。P.D.ウォードは温暖化による海洋脱酸素化説だ(「日経サイエンス」07

年1月号)。彼のシナリオは :

 大規模な火山活動が起きて、大量の二酸化炭素とメタンが放出され、急激な地球温暖化がはじまった。

海水温が上がり、大気から海中に溶け込む酸素が減った。これにより、酸素が豊富な水と深海の硫酸塩還

元細菌が作る硫化水素に富んだ水の、ケモクラインと呼ばれる境界面が上昇して、海面に達した。酸素呼

吸する海生生物は窒息死し、嫌気性細菌が表層水でも繁殖した。硫化水素が大気に拡散し陸上動植物の命

を奪い、さらに上空のオゾンを破壊した。オゾン層に妨げられなくなった太陽の紫外線で、残りの生命も

死に絶えた。いま二酸化炭素濃度は385ppmだが、現在見込まれている年2~3 ppmの上昇が続けば、来世紀

末には900 ppmに達する。大量絶滅は1000 ppmではじまる。

 現在の温暖化にともなう未来予測のうち、気候学者たちは500 ppm超のケースに言及したがらないと、

何かで読んだ。500以下だとある程度はシミュレーションができるらしい。この限度を超えると、予想外

の事態(例えば海底やツンドラの固体メタンの気化のような ? )が起きて、急激に濃度が上昇する可能性

を排除できないという。来世紀末の900 ppmの予測は、現在の直線的延長によるものだ。突発事態は考慮

されていない。ウォードの説が妥当かどうかはともかくとして、500ppmという数字にはご注目を。

 6億年を超えてさかのぼれば、シアノバクテリアがそれまでの生物をほとんど根絶させた大イベントが

ある。もともとの地球はほとんど酸素がなかったから、栄養分に富んだ原始の海で嫌気性生物が繁殖して

いた。海の栄養分が減ると、光合成で自ら有機物を作るシアノバクテリアが優勢になり、光合成の廃棄物

である酸素が蓄積され、大気組成が変る。嫌気性生物には酸素は猛毒だから、深海や深い地下など以外で

は、彼らは絶滅した。

 シアノバクテリアは自分たちの活動の結果を予知しなかった。環境に身を任せて増殖しただけである。

彼らはイノセントだ。少なくとも19世紀まではヒトも、自分たちの生産活動が地球環境に及ぼす影響の大

きさには無自覚だった。受身でしか生きられない子どもと同じで、その罪を問うことはできない。だがい

まのわたしたちは、自分たちが排出する二酸化炭素の意味を知ってしまった。ウォードの説は、そういう

ヒトの自意識の一表現である。大人になったヒトはイノセントではいられない。