いるのは、まず見かけません。わたしも「メルヘンの丘」の名前がなければ、撮ろうと思わなかったでし
ょう。網走湖周辺の丘陵地帯では見慣れた地形ですから。名づけた人の手柄ですね。名前の記憶があっ
て、わたしも通るたびに注目はしていました。この前は、わずかに残る雪と現れた現れた緑が美しく思え
て、カメラに収めました。
雪のある季節は交通止めでしたから、調べてみたら、去年初めて能取岬に行ったのは5月17日です。
トンネルが開通し、今年は最盛期のキタミフクジュソウに出会えました。フリー・ペーパの記事によれば
ば、かつては岬に群生していたこの花も、繁殖する笹竹に埋もれ、いまは絶滅危惧種に指定されているそ
うです。最近何年か、復活を願う地元の人が、一部地域の笹を刈り払って保護していました。
駐車場からすぐの場所に、10メートル四方ほどのロープで囲まれた場所があり、そこにたくさん咲い
ています。観光客は見向きもせず、海際の崖のほうへ行きます。5から10センチの背の低い花で、
枯れ草にまぎれて、人目を引きません。でもよく見ると写真のように美しい花です。もったいないこと。
看板でも立てればちがうでしょうに。もっとも地元の人は、盗掘が心配で、もっと増えるまであまり知ら
れないほうがいいと思っているのかもしれません。
かつてはわたしもそうでしたが、外から来る観光客はたいてい10分ほどしか留まらず、オホーツク海
と能取湖を眺め、岬の看板を背に写真を撮って帰っていきます。わたしは花や鳥を探しながら、時間をか
けてゆっくり歩き回りました。そうしたら入り口から遠い、知床岬を遠望する北東の崖近くの草むらに、
あっちでもこっちでも無造作に咲き誇っています。白い漁船が浮かぶ濃いブルーのオホーツク海を背景に
した、小さな黄色い群落はとても印象的でした。