樹氷 脱炭素社会

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 一昨日の、日経サイエンスの05年12月号、A.B.ロビンスの「豊かな脱炭素社会へ」に触発された

感想の続きです。

 化石燃料有機物由来ですから、炭素を中心とする化合物です。産業化は主として、その炭素の酸化で

生じる熱を利用して進んできました。炭素の酸化で出る廃棄物が二酸化炭素です。未来の燃料候補のひと

つに挙げられている海底のメタンハイドレードも、気化すると、二酸化炭素の20倍の温室効果があると

いわれます。有機系の、石油・天然ガス・石炭、メタンやバイオマスを使うとしても、炭素ではなく水素

を取り出して、その酸化エネルギーを使うのなら、気化されない固体炭素が残るので、温暖化を促進する

ことにはならないと思います。

 有機物に固定されたエネルギー(ストック)ではなく、太陽放射のエネルギー・フローを使う太陽電池

風力発電や、マントルで起きている放射性崩壊による熱を使う地熱発電であれば、炭素循環とまったく無

関係でしょう。核融合発電(遅くとも100年後には実用化されている可能性が大きい)であれば、地球に

も宇宙にも豊富な重水素とリチユムが原料です。原発とちがって高レベル放射性廃棄物が生じたり、暴走

的な反応が起きたりする危険はないといわれています。水素酸化やフローや核融合を使えば、脱炭素化が

可能です。

 ロビンスは、すでに可能になっている技術を総合的に取り入れた設計で、炭素酸化を使うにせよ、水素

燃料やフロー・エネルギーを使うにせよ、経済効率向上が飛躍的に向上すると、考えています。彼が言う

には、発電所で石炭を燃やして得られるエネルギーのうち、最終ユーザーが消費している部分は3%だけ

だそうです。97%は発電所の廃熱、送電ロス、機械の摩擦による損失、待機電力などで失われている、

と。この97%をより少なくするために現在利用できる技術を効果的に使えば、企業でも家庭でも大きなコ

スト削減が可能なのだと、彼は言いたいようです。

 技術活用の一例として、熱帯のバンコクで建てられた家の絵が掲げられています。ひさしとバルコニ

ー、断熱材と機密外郭構造、赤外線反射窓、仕切りのない間取り、屋内の空気を誘導する地下パイプなど

が特徴です。エアコン容量は同程度の家に比べ七分の一ですみ、さらにエアコン廃熱は給湯に利用され

て、光熱費削減に役立っていると言います。前回触れたロビンスの自宅は寒冷地にありました。こちらは

熱帯です。それぞれの地域に合わせて、設計段階から工夫すれば、標準的な建築費とあまり変らないコス

トで、ずっと効率のいい家が建てられる、会社でも車でも同じように言える、彼はそう考えているようで

す。

 この次は、ならどうして発想の転換が遅遅として進まないのか、わたしの考えを書きたいと思っていま

す。