名残の樹氷 脱炭素化と経済政策

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 リンデン・ホロリさん、オホーツク地方の乾いた寒さは、きりっとしていて気持ちがいいですよ。それ

に室内は暖かいし。わたしは関東の屋内の湿った寒さのほうがいやでした。いまこちらも昼は0度を超え

て、滑り止め剤で汚れた道路に水溜りがあったりするので、運転が快適とはいえません。でも早朝の土手

は-10度とか-6度とかで、硬いアイスバンになり、どこにでも歩いていけて楽しいですよ。昨日は川

べりでキタキツネに会いました。美幌では初めてです。カメラのバッテリーが切れてうまく撮れませんで

したが、整理してみてましなのがあったらそのうちに載せます。


 樹氷の写真は今日で終り。また来冬撮ります。それまでに少しはカメラがうまくなってるかなー。


〔脱炭素化と経済政策〕

 自由経済の下で変化を促す政策の効果は、変化に沿う行動がもうかるシステムを確立することにつき

る。いまの社会では、もうかることが確かなら、その方向へ雪崩を打って資本が移動する。倫理や善意に

頼ろうとしてもダメ。EUには、政策的に温暖化ガス排出権取引市場を作り上げた国が多い。すでに自社の

排出量を削減した企業は、割当量との差を売って利益を出している。ヨーロッパが温暖化ガス削減で先頭

を走っている理由のひとつが、この政策である。日本では、自民党政府が排出権割り当てに反対する経済

界に遠慮して、取引市場が拡大しない。排出権取引の普及には政治の役割が大きい。

 ロビンスは脱炭素化が純経済的にも効率化につながると考えている。彼が正しければ、企業の利益を上

げ家計の光熱費を削減できる脱炭素化技術は、すでにあり、さらに日々いっそう改善されつつある、とい

うことだ。自動車産業ハイブリッド車、バッテリー車、燃料電池車の研究開発を精力的に進めている。

ロビンスは金属よりずっと軽量で強固な車体素材がすでにあると言う。軽量で安全な車体ができれば、ガ

ソリンやディーゼルの大出力エンジンでなく、バッテリーや燃料電池でも、利便性を確保できる。

 車体新素材が金属素材より低コストになり、バッテリーや燃料電池の性能が向上すれば、自動車燃料の

脱炭素化が加速される。低燃費で温暖化緩和に役立つ車を低コストでいち早く商品化したメーカーは、も

うかることが確実だ。だが、脱炭素化がどの企業にも一律に利益をもたらすわけではない。車体新素材や

燃料電池の研究開発と規模のメリットの実現には、金属業界やエネルギー業界の動向が関わってくる。

 エネルギー産業で思考実験をしてみよう。すべての住宅、産業施設、公共施設に、太陽電池やコジェネ

レーション燃料電池設備が備えられた状態を、考える。電力会社は、その余剰電力をプールし、足りない

ところに売りながら、全体としての不足電力を発電することになる。専門家に計算してもらわないと数字

は挙げられないが、現在の原発や火力発電施設の大部分が不要になるだろう。この移行がいま軌道に乗っ

たとする。太陽光発電パネルや燃料電池の製作会社、それに水素燃料供給会社は大もうけをする。一方、

電力会社は新たな分野を開拓しない限り、ダウン・サイジングを避けられない。原発プラントや石油採

掘・備蓄にすで巨額投資をしている企業は大きな打撃を受ける。

 よく知られているように、温暖化対策に消極的なブッシュ政権は、既存のエネルギー産業と結びつきが

強い。アメリカでも、しがらみのない地方政府がある州では、独自に温暖化対策が進められている。ブッ

シュ政権は最近、エタノールがこれも彼らの支持基盤である穀物業界の余剰在庫を解決することに気づ

き、ガソリンとの混合を推進している。日本でも、電力や石油の業界は、経済界の有力指導者に、したが

って自民党や経済官僚に、大きな影響力がある。政策は大企業の収益の行方とかかわりが深い。

 資本は将来の利益より現在の利益によって移動する。既存エネルギー産業の現在の利益率が大きけれ

ば、まだあまり利益が多くない新エネルギー関連産業に移ろうとはしない。資金が乏しいから、研究開発

や規模のメリットの実現が遅れる。原発や石油に巨額投資をしている業界は、既存の設備・技術開発の減

価償却が終わるまでの間にできるだけもうけて、株主に大きな配当を払って投資を集め、新分野への転進

に必要な内部資金も蓄積したい。

 ある程度知識のある経済人なら、急激な温暖化の危険性も石油資源の有限性もわかる。石油が、近々枯

渇することはないまでも、採掘が容易なものがどんどん減り、採掘・精製コストが上がり、やがて新エネ

ルギーより割高になる日が来ることは、知っている。だから彼らは、いまの投資からもうけることと、将

来に備えることの両方を考えているはずだ。新市場の開拓には大きな初期費用がかかる。需要がある程度

の規模になるまで量産効果は期待できない。彼らにとってもっとも望ましいシナリオはこうなる。新エネ

ルギーへの本格的な移行を遅らせ、その間に投下資本の償却と資金の蓄積を進める。そして、ベンチャー

企業や税を含むユーザーの初期費用負担で、新エネルギーがブレイクしそうになったら、溜めておいた巨

額資本でこの分野を支配する。アクセルとブレーキを同時に踏む政府の政策は、大企業のこのシナリオに

沿っている。

 技術革新や量産の効果が現れ、新車体素材や脱炭素エネルギー装置の部品が安くなり、商品価格が下が

れば、工場や車や建物の機能を損なわずに、燃費や光熱費を節約できるのだから、新市場がブレイクし、

そこに投資した企業はもうかり、資金も集まる。そこまで行けば、脱炭素化へ雪崩が起きる。しかしいま

は、移行がはじまったばかりだ。新しい需要を開拓したり、償却が終わっていない古い設備を廃棄した

り、新しい設備に投資したりするにはコストがかさむ。旧設備廃棄・新規投資の収支計算と、旧来事業の

収支計算で、前者が有利になる転換点までは雪崩が起きない。

 直接・間接に原発や石油産業を支援する日米政府の経済政策は、旧来事業のコストを低く、利益を高く

維持するのに役立つから、転換点を遠ざける結果になる。だれかに、原発・石油へと、新エネルギー事業

へとの、財政的・政策的支援の数字を比較して見せてもらいたいと思う。脱炭素化が自動的に進む転換点

を引き寄せるには、脱炭素化が早くもうかるようにする政策が必要だ。なお原発は、脱炭素化の一手段だ

が、高濃度放射性廃棄物処理の社会的コストや、暴発・核兵器転用のリスクが、遠い将来まで考えると計

算できないほど大きいので、石油産業と同じく、速やかに縮小すべき側にある。