これで民宿 ?

イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

第一部
 わたしは「民宿」で検索して、この日の宿「釧路湿原パーク憩いの家かや沼」を見つけ、予約したのだ。泊まってみたら、6畳から10畳の客室18、広間が3つに会議室1つ、外からの客も利用できる売店と食堂、それに立ち寄り入浴客のための休憩室もついた、堂々たる建物ではないか。これで民宿 ?
 まあ料金は民宿並だ。カヌーパックで二食付き1万4000円弱(正規のカヌー料金だけで9000円なのだ)。トイレとバスが部屋にないから、ホテルは名乗れないのかな。わたしの部屋は旧館だが、新館だと1000円高くなってもう少し上等らしい。わたしは青畳のこの6畳で十分だけど。源泉掛け流しの温泉には大満足。男湯で、温度がちがう浴槽が屋内に3つ、露天風呂が1つ、合わせると100人はらくらく入れそう。女湯も同じ広さだって。カヌーのガイドさんが言うには、北海道はどこでも掘れば温泉が出るんだけど、塘路湖畔は規制があって湖近くでは掘れないことになっている、とのこと。だから温泉が好きな人はこっちに来るのかな。
 この日の夕食時、大広間の一つがだいたいいっぱいという感じ。道内の客のほうが少し多いみたい。7・8月になるとほとんどが内地の客になるんじゃなかろうか。またガイドさんの言い草だけど、そのころは釧路川もにぎやかで、まず丹頂なんか出てこない、本当にいいのは今頃か秋の終わりだね、だって。
 今日はカヌーから撮った川岸の風景3点。

第二部

       フィンランド・モデルは好きになれますか 7
 
1 フィンランドの風土と歴史
 (3) 国家ビジョン(承前)
 フィンランド憲法が国民の責任や義務に言及する、例外的な項目が二つある。一つは環境に対する責任(20条)である。
 
  自然とその生物多様性、環境と国民遺産はすべての人に責任がある。当局はすべての人に、健全な環 境の権利と、自分の生活環境に関する決定に影響を与える可能性を、保障するように努めなければなら ない。

環境の維持は、国家を超えて、未来の国民と世界の人々に対して万人が負うべき責任である。
 もう一つの例外項目は国防義務(127条)だ。

  すべてのフィンランド国民は、法律に定められているとおりに、国家防衛への参加あるいは支援の義 務がある。良心に基づく国家防衛軍務からの免除規定は法律で定める。

国防義務と関連して、23条は、フィンランドへの武力攻撃やそれに匹敵する緊急事態における、基本権と自由権の適用除外を、129条は大統領の国防軍出動命令を、規定する。国民福利と遵法に次ぐフィンランド憲法の第三の柱は、国際関係におけるEU重視策である。自由権の項で営利活動の自由が記載されていた。高度福祉を支える経済力を、自由経済の民主主義国、特にEUとの協力関係を通じて実現する、これもまた国家ビジョンの一部である。戦争と言えば、日本ではまず敗れた第二次世界大戦を思い出すが、フィンランドでは冬戦争と継続戦争だ。東に国境を接し、いまなおフィンランド領土内の支配領域を返還しない大国ロシアの圧力を、この国の人々は意識せずにはいられない。防衛力は、世界政治に覇をとなえるためでなく、現に自由経済を繁栄させて福祉を実現している国民を護るためだ。統制経済専制に飲み込まれる脅威を忘れられないからだ。
 フィンランドイラク戦争に派兵している。アメリカの「大義」に賛同したからではなく、欧米との連携を形で示して、ロシアを牽制するためだ。かつては独立を維持するため、ソ連に対抗するナチス・ドイツと連携した。今度は「フィンランドフィンランド」という行き方を守り抜くための、やむをえない選択だった。日本には、非武装平和主義と非軍事的国際貢献を武器に、アジア諸国同盟の核となり、アメリカやロシアからの相対的自立を目指す選択肢も考えられる。あるいは、わたしは反対だが、他国が軽視できないほど軍事力を強化して、国家としての行動の自由を確保するという選択肢もあるのかもしれない。だが、対ロシア最前線に位置し、大国意識旺盛な国々がひしめくEU内に身を置く、小国フィンランドには、どちらの選択肢もない。
 この国の男性は18歳以後に最低一度は、7・8ヶ月から1年程度の、兵役を務める義務がある。ただし宗教あるいは良心に基づく拒否は認められ、同じ期間収容所で暮らしてボランティア活動をする選択肢もある。アメリカは徴兵制度をやめてから、入隊者の大学進学を優遇するなどして、主として貧困層から志願者を募るようになった。その結果、戦争の死傷兵に有色人種の割合が著しく高くなり、経済的に恵まれた層、たとえば上院議員の子弟などは、ほとんど犠牲にならないという。だからイラク戦争では、ベトナム戦争のような反戦機運の盛り上がりはない。実際に命を危険にさらす軍隊への志願制度は、貧困者のプールが存在する格差社会でこそ機能する。自衛隊を本当に戦争する軍に変えて、それでも志願制を維持したければ、社会的格差を一層拡大しなければならない。フィンランドは学費が無償で福祉が充実しているので、志願兵制度は成り立たないだろう。徴兵制のほうがまだしも社会的に公平なのである。
(この項終り)