モミジ! ムダの効用41-8

 
イメージ 1
 
イメージ 2
 
イメージ 3
 
イメージ 4
 
イメージ 5
 
イメージ 6
 
イメージ 7
 
 今年は東京から来てくれた人がいたこともあって、けっこうたくさんの場所を回って、散り際、盛り、色づき途中
 
と、さまざまな紅葉を楽しむことができました。今日は緑から真紅まで、色合いのちがうモミジの写真です。
 
        〔ムダの効用 41-8〕
 
まつろわぬ者たち()―8
 
律令国家の貴族と民衆―承前〉
8世紀の公民に課された負担はどのようなものだったのか、坂上康俊の『日本古代史④』(岩波新書5276)網野善彦(同前120129)に拠って見ていきます。最初は人的負担。4人の正丁(2160歳の男子)からなる標準的な戸(20)ごとに一人、一里で50人が、軍団に徴兵されます。彼らは食料武具自弁で軍事訓練を受け、正倉(祖として徴収された米の倉庫)や国衙を警備します。都に召集されて衛士として街や宮廷を警備したり、反乱を鎮圧したり、九州で対朝鮮戦争に備え(防人)たり、鎮兵として対エミシ戦争に従軍したりもします。特に坂東の兵は西に北にと、使い回されたようです。
さらに一里ごとに、都で雑役に従事する仕丁(じちょう)と、その付き添いとして炊事などをする厮丁(しちょう)が各一人。その他の成人男子も原則として、都で年10日、造都、造寺、造仏などの力役(歳役)に従事する義務(遠国では庸で代納)があります。地方では国司が年間60日まで徴発する(雑徭)ことができ、河川の改修や使者の送迎などに使役します。これらとは別に、郡司は子女、兄弟、姉妹を都に差し出す義務があります。彼らは後宮で働く采女、宮廷の護衛に当たる兵衛、そして後には軍団の兵に代わる衛士として勤務しました。
次に物品の負担。口分田で収穫された米の3~10パーセントが祖として徴集され、国や郡の正倉に蓄えられます。名目は飢饉に備える備荒用ですが、奈良時代にはカギが中央で管理され、祖を納めた人々の手の届かないものになっています。そして平安時代には中央官僚の給与に充てられました。わたしの想像ですが、対朝鮮戦争に備えた防人や対エミシ戦争で動員された兵士の兵糧として、各地の正倉のカギが開けられたのではないでしょうか。班田の後に残った田地は国司が耕作者に賃貸し、収穫の20パーセントを徴収して都に送ります。地方政庁である国衙の経費に充てられたのは、公出挙(くすいこ=官が貸し出す種籾)の利子です。貸付は強制的で、利子の割合はほぼ祖と同率です。10世紀には貸付がなくなり、利子だけが取り立てられるようになります。
中央政府の主な財源は調と庸です。調の由来は、服属したクニからヤマトに上納される物品のようです。もともとはヤマトの神を祭るという名目で集められたのでしょう。律令下では成人男子(正丁)一人ひとりに賦課されました。その品目は地方ごとに、米、絹、絁(あしぎぬ)、糸、綿、布、塩、あわび、海藻、かつお、鉄、油、染料、そのほかの海産物や山で採れる食用・薬用植物など、広範囲に及んでいます。これらは国家の経費、官人の俸禄などに充てられます。庸は歳役に代納される布や、仕丁・厮丁・采女・兵衛・衛士など上京して勤務・雑役に従事する人々への仕送りという名目で、すべての成人男子(正丁)に賦課さます。品目は布・米・塩・綿。ただし庸は畿内には賦課されません。畿内が歳役の主力供給地だったからでしょうか。調も畿内は半分です。これはたぶん機内の人々がもともとは、ミツギモノを受け取る側に連なっていたから(坂上 同前 89頁参照)。調と庸は遠国からでも平民が食料自弁で運びます(運脚)。その帰路、食料が尽きて餓死することもあったと伝えられています。
中央政府がエミシ地域に建てた郡には2種類あります。一つは城柵のない郡で、エミシの生業や社会にほとんど干渉しない、交易(朝貢)を目的にしたものです。前章に述べた安部比羅夫の遠征で置かれたものがこれです。北部には城柵のある郡は作られませんでした。もう一つが城柵を中心とする郡です。こちらは建郡して一定の時間がたつと、住民は他地域の公民と同じ負担が課されます。8世紀の終わりごろ、南部はほとんどがこの種の郡、あるいは城柵さえ必要がないほど同化が進んだ郡になっていて、中間地域では城柵のある郡とない郡が混在していたと思われます。 
エミシはもともと自然に寄り添ってくらし、労働を知らなかった人々です。それが誰とも知れぬ者たちの消費する作物を作らされ、交易対価もなしに産物を掠め取られ、自分の敵でもない者と戦わされ、自然の恵みをだいなしにする力役に追いやられます。つきまとう監視、命令、威嚇、蔑み、処罰。こういう変化がもたらす日々への違和感。つのる不満と屈辱感。何かをきっかけにそれらの感情が燃え上がる怒りに転化し、エミシを戦いに駆り立てたと、わたしは考えています。(次章に続く)