これが冬のオホーツク海
まりさん、環境破壊に怒っていらっしゃいますね。ジャレド・ダイヤモンドの『文明崩壊』に、外部の侵
攻によってではなく、内部の環境破壊で滅びた文明の例が挙げられています。支配層が、伝統的文
ようです。いまは地球全体が一つの文明になっていますよね。社会システムの転換が先か、文明崩
壊が先か、時間との競争になっているみたい。
そらさん、わたしは能取岬に立って冬のオホーツク海を眺めていると、公憤も私憤も忘れて、静かな
気持ちになります。
昨日に続いて能取岬から眺めた冬のオホーツク海です。一面の氷原になってしまうと、海という感じが
しなくなります。海面と海氷が競っているこの状態こそ、北海の冬というわたしのイメージにぴったり。岸
では蓮の葉氷が成長していて、その先には浅い海底でできたシャーベット状の氷が浮かび上がり、沖か
らは厚い流氷帯が迫ってきています。低く飛ぶ海鳥さえ、風景との調和を乱すまいとするかのように羽を
白く染めていました。
凍るのは真水だけだそうです。グリーランド海域などでは真水が凍って、海水は塩分濃度が大きくなっ
て比重が増し、海底深く沈みこむのだとか。この沈み込みが駆動力になって、海洋表面では赤道付近
の温められた海水が北上し、深海では冷たく重い海水が南下します。この海水大循環は熱のコンベア
ーベルトとも称されます。その働きで、北海道よりずっと北にあるフランス、ドイツ、イギリスなどの各地で
も、人口が密集する都市を建設することができました。百年、千年の単位で見ると、地球温暖化が海水
大循環を停止させる可能性があると言われています。
わたしがぼんやり見つめていたオホーツクの氷海も、考えてみれば現在の温和な気候を作っている自
然システムの一部なのですね。