三つの滝 1  貧困脱却と二酸化炭素

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 6月の暑い日に出した扇風機は、このところ無用の長物になっています。それでもきのうは、室内でも

30度を超える時間がありました。窓を開けたら乾いてさわやかな風が通り、汗はかきませんでしたが。

本州以西では、じめじめした暑さにうんざりしている人もいるでしょうね。そういうあなたのために、今

日から3日連続で滝の写真をアップします。せめて目で涼んでください。まず層雲峡の銀河の滝です。下

で横に広がる近くに立って、飛まつを浴びるところを想像してみてください。


          〔貧困脱却と二酸化炭素排出量削減〕

 今月開かれたラクイラのG8は、G8首脳と中国を筆頭とする新興国側との間で、2050年までの温室

効果ガス削減目標50パーセントに、合意に達しないまま閉会しました。おおかたの日本のメディア報道

が流布させているのは、削減目標設定に熱心な先進国とそれに抵抗する新興国の対立、という図式です。

日本人の多くがなんとなく、中国を筆頭に、新興国が自国の経済発展にブレーキをかけられることを嫌っ

て、温暖化抑制計画に反対していると、思っているのではないでしょうか。いまや中国が排出量世界一に

なっており、他の新興国の排出量も増えているのだから、彼らの国家エゴは人類の未来を危険にさらすこ

とになる、と。

 しかし人口を無視して、国別の総排出量だけを比べるのは不公平です。中国人一人当たりの排出量は、

アメリカの5分の1、日本の半分です。3千万人の中国人はまだ、電気のないくらしをしています。それ

なのに、先進国と足並みをそろえて排出を削減しろと迫られたら、貧しい国民の生活を向上させようと努

力するな、貧困に留まれ、と要求されているように感じるのは、当然ではないでしょうか。中国は民主化

の遅れ、言論弾圧を非難されています。成熟した民主主義は、最低限の生活必需品を国民のほとんどが容

易に入手できる社会でないと、けして根付くことはありません。民主化を求めるなら、貧困解消に手を貸

すべきです。

 しかも先進諸国は、国内生産の比重を比較的二酸化炭素排出量の少ない金融、情報やその他の先端産業

に移し、排出量の多い従来型工場生産を途上国で増やしています。「世界の工場」の役割を押し付けなが

ら、自国の責任で排出量を減らせと言うのは、先進国の国家エゴです。より大きな責任は、自国の経済発

展と国民の快適な生活のために、途上国の貧困・労苦・劣悪な生活環境と、それに起因する政治不安を、

放置し利用してきた先進諸国にあります。この責任をはっきり認めたうえで、先進諸国の資金と技術をつ

ぎ込んで、途上国のクリーンな経済発展に協力する姿勢が明らかになったときにはじめて、世界的な合意

に道が開けます。

 実現はしませんが、思考実験として考えてみてください。気温上昇を許容限度に抑えることができる人

類の二酸化炭素総排出量を算定し、世界人口で割って、一人当たりの排出権とする。それ以下の人は自分

の余剰を売り、それ以上の人は自分の過剰を買うことにします。設定単価よっては、途上国の人は大きな

収入を得て、アメリカ人などは大きな支出を余儀なくされます。貧しいくらしをしている人ほど多く売る

ことができ、豊かなくらしをしている人ほどたくさん買わなくてはなりません。施しとしての援助ではな

く、地球環境の平等な利用権によって、世界でも国内でも、貧富の差が縮小することになります。

 この理解をもとに、現実的な交渉が行われるべきです。