引き潮の湖 過疎と過密

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 能取湖オホーツク海につながる汽水湖ですから、潮の満ち干で水面が上下します。この日夜明けの時

刻には引き潮でした。雲間を洩れる朝日が、破れた番小屋前のわずかに残った水溜りにアオサギの影を落

とし、海と湖を分ける岸壁で満ち潮を待つ漁船をうす赤く染めていました。


 数年前に収録された「片道最長列車の旅」(タイトルがまちがってる?)の再放送を見たら、東北地方に

入った関口知宏が、「北海道とはぜんぜんちがう」と言っていました。住み慣れて普通に感じるようにな

っていますが、視界が広いことがこちらの一つの特徴だと思います。点在する都市部からちょっと離れれ

ば、見えるのは野山・水・空。目に入る人や車がわずかなので、美幌のような盆地でも伸びやかに感じる

のでしょう。

 「世界一番紀行」が世界一人口密度が高い都市としてコルカタ(カルカッタ)を取り上げていました。常

に誰かと肌が触れ合う人、人、人の密集の中では、自分と語り合うような瞬間をもつのはとても困難なの

ではないか、そんなことを思いました。ここでストレスを溜めずに生きていくには、個人、家族親族、友

人知人、他人との境目をあいまいにして融和するしかないのかな、と。

 ときには牙をむく広大な自然のなかで、他部族と競合しながら生き抜くために人と人が協働するのと

は、だいぶちがう個人意識が育つ、そんな気がします。自己の外郭を他人との接触のなかに自然に融けこ

ませてしまうような。北方の森や草原に散在する人々は、個人の強さを恃み、家族でまとまり、時折の協

働には厳しい集団のおきてを作ってきたのかな。そんな心性を引きずる個人が東京の満員電車で、互いに

肌をこすりあう密度を強要されていると考えれば、不便をかこちながら都会に住むのを嫌がる過疎地の高

齢者の気持ちがわかる気がします。