今年の流氷にさようならを

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 今年の流氷が網走海岸に別れを告げた今月4日に鱒浦で撮ったものです。わたしはまだゆるんだ春の空

気になじめず、過ぎ去った厳しくも美しい風景を懐かしんでいます。映像で見る高温多湿地帯や記憶にあ

る日本の夏は、生命の営みで溢れています。北国の厳冬期にもにぎわいはありますが、その主役は無生物

です。透明な蒸気や白い霞、流れや波や雲、雪や氷への、さまざまな水の変化。轟々と荒れ狂ったりしー

んと凪いだりする風。暗い雲に閉ざされたり空と地に満ちたりする太陽の光。

 枯れ木・常緑樹・鳥や獣の姿はあっても、水と空気と光と大地の凹凸の数かぎりない組み合わせが織り

なす風景を引き立てたてるのが、その役回りです。花を微細に眺めれば動物の生殖器にも似て、動植物が

腐り崩れる残骸は無残です。無生物が主役になる北の冬は、それら生々しいものをほとんどを覆い隠し、

清潔で非情です。

 わけても、枯枝枯れ草を包む細かい氷の結晶が、入射角の低い紅色の陽光を散乱させて輝くさまは、さ

ながら夢幻の世界。ぬくぬくと暖かい室内を出て、皮膚の露出した部分が固まるきりっとした空気の中を

さまよっていると、ふと意識が遠のくような瞬間があります。そんなとき、このまま雪に身を横たえて凍

え、眠りに引き込まれてこの世を去のはとても甘美、そんな危険な誘いを感じたりもします。