をめぐらせると、白い氷が減って海面の青が目立っています。
30年以上前に知床南岸の羅臼に泊まったとき、毎年流氷に海を閉ざされて冬は漁ができないという話
を聞きました。最近は羅臼と国後の間の海面を氷が埋めつくすことはないようです。
シベリアの森が作る豊富な有機物を運ぶアムール川の真水が大量にオホーツク海に注ぎ込みます。塩分
の濃い重い海水の上5メートルほどの真水の層が凍って流氷の材料になります。北風に乗って勢いよく南
下すれば、北海道のオホーツク海沿岸を覆い尽くして、あまった氷が知床突端を回りこんで半島南岸に達
し、さらに根室や釧路の沖にも浮かぶことになります。去年は釧路から流氷が見える日もあったようです
が、今年はまだそこまでの日はありません。
沿海が広範囲に凍結したときはこのあたりでも気温が2度ほど低下するとか。海面が氷の蓋で覆われる
と水蒸気の蒸発が減り、雲量が少なくなります。流氷がある日とない日では日照時間にも差があるようで
す。このあたりの明るい冬の日射しは流氷のおかげもあるということ。晴れれば放射冷却が盛んになり、
気温が下がります。流氷が縮小すれば、降雪が増えて冬の気温が上がりやすくなります。
さらに、シベリアの森が作る有機物が北海道東部沿海に届きにくくなります。また氷結するときに排出
晴れる塩水が海底の有機物を巻き上げる効果も減少します。プランクトンが減り魚が少なくなって、それ
を餌にする動物も漁師さんも困ります。近年知床に集まるオジロやオオワシの数が減って、釧路湿原や霧
多布方面に棲息域が拡大しているとも聞きます。今年は美幌川上空をこれまでになくたくさんのオジロが
舞う日がありました。美幌川ではわたしは初めてですが、オオワシも何度か目撃しています。流氷の減少
から始まる気候や生態系の変化が現在進行中、そんな実感があります。