初雪

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 きのう「この時季としては暖かい」なんて書いたのを、美幌の空の番人が見たのでしょうか。「それなら

これでどうだ」とばかりに、あの後8時過ぎから、雨を雪に変えました。朝の予報は雨と曇りだったんで

すよ。昼前には降り止んですぐ融けましたけど。

 けなげに一輪だけでがんばっていたオレンジ色のポピーも、「もう、たまらんわ」と、倒れ伏していまし

た。わずかな重みに耐えかねた花とちがい、緑の葉はふんわりかぶさる雪を喜んでいるみたい。500円

玉くらいに大きくなったり、糸くずみのように細くなったりしながら降りかかる雪は、、隣やウチの庭に

あるイチイにをバックにすると、よく目立ちます。空き地の枯れ草は白髪を思わせます。


 雪の降りはじめになると蘇る記憶があります。20代の後半に日通で大型ドラックの運転をしていた

ころのことです。午前中の雨が急に牡丹雪に変わって5センチほど積もった昼時に、文京区の急な坂道に

差し掛かりました。停車する場所もないし、淡い雪だからだいじょうぶだろうと、チェーンを巻かずに下

りはじめたら、途中でスリップ。人も車もいなかったから事故にはなりませんでしたが、ほんとにヒヤッ

としました。スタッドレスはもちろん、スパイクタイヤという言葉もあまり聞かない時代でした。

 確か隣に乗っていたのは、ロシア系を思わせる白い肌にきれいな白髪の、がっしりした50代末らしい

労務者です。毎朝、営業所に近い山谷のドヤ街から手配師が集めてきた人が、荷物の積み下ろしをする助

手として乗り込んできます。当たり外れがあって、体から濃いアルコール臭がしていて、のらりくらりと

ほとんどサボっている人も、見かけは汚いのに運転手に力仕事はさせたくないとばかりに骨惜しみしない

人も。スリップした日の彼は清潔感があって、40キロの米のカマスを手鉤で軽々扱う人でした。おしゃ

べりも楽しく、彼と組めば当たりです。

 みんなもうこの世の人ではないのでしょうね。いまは、当時1日平均20トンほどの荷捌きに一緒に汗

を流したどの人も、わたしの心の奥に何かを残してくれているとわかります。と言っても、一人ひとりは

ほとんど思い出せません。記憶は集合的です。