晩秋の森





降り積もる落ち葉を踏んで森を歩くのが好きです。下草に緑萌え花咲き初める林床、若葉から木漏れ日
が射す小道、むせかえるような盛夏の林、入り混じる針葉樹の緑と落葉樹の赤黄色が覆う山、わずかに風
にも梢から雪片が舞い落ちる白い木立、みんな好きです。森にいると気持ちが安らかになります。
脚本家の倉本聰さんが森への思いを語っているテレビ番組を見ました。彼は富良野在住31年目で、ゴ
ルフ場跡を買い取って森を育てています。アイヌの人や世界各地の先住民から、「大地の利子を分けても
らう」、「土地は子孫からの預かり物」という気持ちを聞いて、衝撃を受けたのだそうです。彼は特に、
水を蓄える森の機能の大切さを強調していました。
日本は森の国です。この地の住人は1万年余のあいだ森と共存するくらしを続けてきました。いまは産
業化が進み、木が切られ、森が荒れています。都市で生まれ都市で育ち都市でくらし、河川の下流にはな
じみがあっても、上流を知らない人が増えています。ようやく最近になって、地球環境への関心が高ま
り、森を大切にしようという機運が出てきているのはうれしいことです。
フィンランドでは私有地でも入林は万人の権利とされ、ベリーやキノコなどの森の恵みは誰もが無償で
楽しむことができるとか。このあたりの私有林で、「私有地につき立ち入り禁止」の立て札と有刺鉄線を
見ることが多く、そのたびにさびしい気持ちになります。かつては日本でもヨーロッパでも、住民の入会
権は自然なものでした。森を私有する思想はありませんでした。共同で利用し、共同で維持すべきもので
した。