秋色の渓谷
NHKBS2でアメリカのテレビドラマ“ER”の第13シリーズが放送されています。13年間続く
息の長さはすごいですね。韓国ドラマも50回を越すものが多いけど、ラブ・ロマンスはもう食傷し、見
なくなりました。時代劇は、『朱蒙』はまだましだけど、『薯童謡』なんかあまりに悠長なテンポにイラ
イラします。ところが“ER”は、少しもパワーが落ちていないようで、わたしはいまも毎回楽しみにし
ています。
プロデューサーのマイケル・クライトンには、その反人為温暖仮説に疑問があります。でもこのドラマ
に関する限り、彼の手腕に脱帽です。アメリカの大手が作る映画はこのところぱっとしません。しかしテ
レビドラマは、“Sex and the City”などもあり、現代の大都市の生活に対する敏感な感受性の点で、や
はり世界の最先端を行っているという気がします。腐っても鯛、がたがたになっても世界の超大国、とい
うところでしょうか。
日本のアニメやマンガは、テーマがわたしの趣味と重ならないので多くはないのですが、たまに見る
と、世界をリードしているという評判に納得がいきます。でもドラマはダメですね。第一に、イギリスや
韓国のものもそうですが、テンポが悪い。現代的じゃないんです。一時代前の農村ぐらしになら合ってい
たのでしょうけど。
その点“ER”のめまぐるしいまでの軽快な展開は、いかにも現代都市生活の鼓動に合致しています。
次々さまざまな社会問題を背景としてとりあげながら、ひとつテーマに深入りすることなく、人間ドラマ
に集約させていく。社会への問題提起を目的にする作品として見れば不満が残ります。でもクライトンの
狙いは別なところにありますね。人間の心への興味だと思います。
シリーズごとに、たくさんの登場人物が死んだりシカゴ・カウンティー病院を去ったりして、いまでは
初期のシリーズで活躍した人物はほとんど残っていません。ときどきいまはいない人びとが、自分の親し
かった人のように、懐かしくなったりいまはどうしているのか気になったりします。それだけ印象的な人
物の造形に成功しているのでしょうね。