北網と根釧を分ける山々

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 摩周湖を囲む山々から始まって清里峠、標津岳、サマッケヌプリ山、俣落岳、武佐岳とつながる稜線で

す。これが北見・網走地方を根室支庁釧路支庁の管内から分けています。


 きのうの続きです。

 これまで震災後のガレキ処理、仮設住宅建築、復興住宅建設などにたいする行政の支援は、1世帯あた

り1000万円を超えていると目黒さんは言います。彼の推定では、いま予想される大規模地震での家屋

の全壊・全焼は、首都直下型で90万棟、東海・東南海・南海地震では100万から112万棟。100

万世帯に1000万円支援するとして、合計で10兆円です。ちなみに、08年度一般会計歳出予算総額

は約83億円で、国債費、社会保障関係、地方交付税の約57.5兆円を除くと、25.5億円。そのな

かから自衛隊・消防・警察などを含む公務員に給与を支払い、破壊された道路や橋などの修復も行わなく

てはなりません。それでなくても、目黒さんによれば震災による経済損失は200兆から300兆に達す

るはずです。10兆円の財源はどこにあるのでしょう。繰り返しになりますが、M7規模の地震は今後数

十年間に40回から50回予想されています。

 復興支援による国家財政破綻を防ぐため、急いで全家屋の耐震化を図って、1棟当たり100万円の公

的助成をするとします。目黒さんの計算では、耐震性に問題がある家屋は1150万棟です。助成の合計

は11.5兆円ですから、財政の現状を考えると、まったく現実味がありません。そこで目黒さんは二つ

の提案をします。ほとんど公費を必要としない耐震化促進案です。

 第一の提案は「耐震補強実施者を対象とした共済制度」。耐震補強を実施したときに数万円を積み立て

てもらい、全壊で1000万円、半壊で300万補償される仕組みです。現在の耐震基準を満たしていれ

ば、震度6以上の地域でも全壊は2から3パーセント。全国の家屋数を考えると、1000世帯が1世帯

を支える計算になります。もうひとつは震後火災のみを対象とする地震保険。耐震補強で初期出火率が減

りますから、共済で補償される倒壊を除けば、保険料は年間1000円程度にできると、彼は言います。

 確かに全家屋が耐震化されれば、倒壊・焼失家屋数が劇的に減り、したがって死者も減ります。共済と

保険があるので公費による民間支援が必要なくなりますから、公共物の再建がはかどって、経済復興も早

くなります。問題は、例えば100万円をかけて、自費で耐震補強することをみんなが受け容れるかどう

かです。まず、今後は公費による復興支援が不可能なことを説得力のある数字で示し、漠然としたお上頼

みの感情を払拭することですね。そして、目黒さんの提案するような共済と保険の制度を政府の責任で設

計し、それに参加する限り確実に共助を受けられると説得することです。

 わたしだったらどうでしょう。家族が同居していれば、まちがいなく共済と保険に参加します。自分だ

けのことなら、どうせ先のない命というところもありますから、迷いますね。でも、みんなに迷惑になら

ず、被災者を助けることにもなるのだからと説得されれば、気持ちが動くような気もします。制度運営者

を信用できるかどうかがポイントかな。