月末、次のオオカサモチ、コウゾリナ、エゾキヌタソウ、ハマニガナは今月半ばのものです。大きなカサ
モチのカサモチって何なのかわかりません。コウゾリナは剃刀菜。茎や葉のぞりぞりした感じが切れない
剃刀を思わせるのだとか。蝦夷砧草の砧って布を打つ台ですよね。この草のどこが砧と関係あるのでしょ
う。浜苦菜は茎を折ると出る汁が苦い菜の浜に生えるもので、これはわかりやすい。黄色い花が周りに緑
のない砂地で一輪だけ咲いていました。
思えば生物の適応力には驚嘆すべき強靭さがありますね。35億年以上前に原核生物が誕生して以来、
生物は姿を変え、機能を新たにして、現在まで命を継いで来ました。その間、在来生物には猛毒の酸素に
富む大気への転換、スノーボールアース、大陸合体・分離に伴う噴煙が太陽放射をさえぎる歳月、海洋の
脱酸素化、いまより気温が10度以上高い灼熱期、小天体の衝突などなど、荒らぶる地球は何度も生物に
厳しい試練を課し、95%の種を滅ぼしたこともありました。
生物の適応戦略は、奇想天外な変異を生み出して多様性を増し、環境変化に耐えられない種は滅ぶにま
かせ、たまたま適応できた形質をもつ種を繁栄させるというものでした。遺伝子転写のミスを何重もの防
止・修復機能で減らす一方で、ある小さな割合で突然変異が起きるようにミスをゼロにしないという、絶
妙なバランス。それによって多様性を維持しながら有用な形質の劣化も防ぎました。
生物界には予期、計画、管理をする中央がありません。すべてが周辺です。それぞれの周辺を占める生
物が、生き残りを賭けて、有用な形質を護りながらも旧くなった形質を滅ぼす新奇な変異を許す。予測の
つかない環境変化に適応する上で、多様性に賭けて生き残りに有効な新しい形質を模索する戦略が有効だ
ったからこそ、いま地球は生命が満ち溢れています。
未来の気候変動を間違いなく計算するには算入すべき変数が多すぎます。いまの科学ではわかっていな
い変数もありそうです。自然環境変化の予測は確率でしかありません。経済・社会も、産業化の段階が終
わってからは特に、今後の予測が難しくなっています。予測が困難な未来に適応するには、中央管理型の
文明では限界があります。完全な無秩序は避けつつも、新奇な変異を抑制せず、それぞれの周辺が自立的
に模索し、現れた新しい有用な形質を速やかに波及させる。生物の適応戦略に学ぶそういう方略を取り入
れないと、文明は生き延びられないのではないでしょうか。