大函  情に訴え制度悪を隠す

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 陸地で地殻の厚さは35km。地球の半径は約6378kmだから、地殻は0.5%ほどの深さでマント

ルと核を包む表皮ということになります。ほとんどは岩石で、土壌は岩石の表面をうっすらと覆うにすぎ

ません。そのうすい土壌にしがみついて草木が育ち、動物を養っています。大雪山系のあちこちに岩石が

露出し、わずかに溜まった砂や土を頼りに木が茂るようすがわかる地形があります。層雲峡はそのひとつ

で、大函では間近にそれを見られます。


 『ガラスの牙』というテレビドラマがあります。非行少年の更生に尽くす保護司の実話をもとに作られ

たとか。朝日新聞にこのドラマに感激した読者の投稿が載っていましたが、わたしはドラマを見ながらだ

んだん腹が立ってきました。ストーリーの中に制度の欠陥がはっきり出ているにもかかわらず、その面は

完全に無視して、親の愛を説き、一人の保護司の献身に視聴者の感動を誘導しようとする意図が明白だっ

たからです。

 「植物には水を、子どもには愛を」はあたりまえのこと。ヒトの子は世話をしてくれる人に依存して育

つ存在であり、だからわたしたちは子どもをいとしいと思う本能をもっています。しかし本能は自然に現

れるものではなく、環境によってスイッチが入ります。文明はさまざまな生得的な本能をゆがめて発現さ

せる面があるから、それを正す人の努力が必要です。それを制度にするのが政治でしょう。

 子どもの虐待は、身体的虐待、精神的虐待、ネグレクトなどに分類されますが、そのすべてが外から見

えやすいわけではありません。特にいまは、親が自分に満たされなかった願望を子に託した結果としての

虐待が、「子の将来を思う親の愛」とみなされやすい。子ども本人もこの錯誤に引込まれて、育ちが歪む

場合も少なくないようです。しかしわたしに言わせれば、子の依存本能につけ込んで、大人の都合にあう

ように子を濫用する(アビューズ=虐待する)のは、すべて児童虐待です。

 虐待親からはできるだけ早く子を引き離し、子どものいとしさがわかる大人の保護下に置く。その後親

の態度が変わったことを見極めて子を家庭に戻す。態度が改まらない親には子を戻さず、社会の責任で養

育する。そのような制度を充実させて、「植物には水を、子どもには愛を」がわかって制度を担う人材

を、必要な数だけ育成する。それがいま社会に求められていることでしょう。

 このドラマはそういうことには完全に目をつぶっているんです。小泉・安倍両政権のもとで、社会福祉

はどんどん細り、家族へのお説教や国家主義的心情の強調という精神主義が強くなりました。新聞でもテ

レビでも、同じ路線のものがとても多い。戦前もそうでしたが、国家権力の暴走が近づくと、国民の情緒

を動員する動きが強くなります。なんだかいやな風向きです。