花のじゅうたん  日本の右傾化 最終回

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 写真はゼンテイカ(赤みの強いほう)とエゾキスゲ(黄色)のじゅうたんが広がる野付半島です。 


 知床リップさん、せせらぎ公園でお会いすることがあるかもしれませんね。メガネをかけて少しお腹の

出たチビの年寄りがカメラをぶら下げていたら、それがわたしです。


〔日本の右傾化 最終回〕

 いま世界は、産業が主軸の経済から情報・サービスが主軸の経済への、大転換のさなかにある。旧い経

済体制の悪しき遺産、温暖化、地下資源枯渇、世界的所得格差拡大、新経済への不適応などに注目が集ま

る。それらに加え、政府や個人の無力を痛感させる自然・社会災害や新しい疫病の情報が迅速に広がり、

人々の不安と憎しみの温床になる。情報・サービス社会の主役は、大勢の単純労働従事者を指揮する少数

の有能な指導者ではない。いろんな場所で創意と工夫をこらして、情報・サービスの生産と消費を担うべ

き諸個人である。彼らが、問題解決への参加を拒まれ、無力な召使や傍観者の地位に押しとどめられるか

ら、モラル(精神活力)が低下し、衰えた共同観念を代替する分散的な情緒や妄想がはびこる。

 国民より国の威信がだいじで、旧社会の秩序にあこがれる、不運な個人のくらしへの共感能力に乏しい

各界指導者が、自分たちの権威を守ろうとする。そのために、従順でない者の声を権力や地位や暴力で抑

圧したがる。そういう傾向の拡大をわたしは「右傾化」とみなしている。右傾化を求める思想(右翼思想)

は、諸個人の創意と新しい自発的な活動の足枷になる。方向が逆だから、右翼思想は経済の転換をギクシ

ャクさせる。そして、そのしわ寄せを受ける人々の間で絶望や不安が増大する。

 「社会主義陣営」の破綻がはっきりして、既成体制への対抗軸が消滅した。代わって劣位者の絶望や不

安を受けとめ、行動への参加を促すビジョンがない。だから被害を身に受ける人々のなかにも、幻の過去

へのノスタルジァがつのったり、一挙に事態を転換させるカリスマを求めたりして、右傾化に合流する機

運が生じる。右翼政治が絶望と不安に拍車をかけ、絶望と不安が右傾化を促進する。この悪循環を断つに

は、希望の見えるビジョンが必要だ。求められているのは、経済転換によって被害を受ける人々の生活を

補償しながら、社会全体で情報・サービス化に対応する能力と生産・消費スタイルを組み上げていく、そ

ういうコンセプトにもとづく、現実的で説得力のあるプランである。

 個人では詳細な立案は難しい。いろんな分野の専門家を含むプロジェクト・チームを立ち上げなくて

は。力のある組織か個人に呼びかけを期待したい。衆を集められず、体力気力の衰えを感じる年齢の非才

なわたしが、一人でできることは何だろう。せめて大まかなコンセプトだけでも表現してみたい。具体性

が欠けていて説得力に乏しいかもしれない。それでも、だれかが根拠にもとづいて考えはじめるきっかけ

や、考えるヒントとして役立つことを目指して、やるだけやってみよう。今の世界には目に見えない大き

い知的ネットワークがあって、強権が情報を遮断していない国なら、その気のある住民はアクセスでき

る。わたしもたくさんの人が語り、書き、映像化してくれた感想や主張、集めて発表してくれた資料のお

かげで、これまで考えたり書いたりできた。ネットワークの片隅で、ささやかなお返しをしておけるだろ

うか。

 その他には、情報・サービス化が進む社会のなかで、身をもって楽しむ工夫をすること、かな。生産と

消費、労苦と楽しみ、発信と受信の分業が、だんだんなくなっていくのだと思うから。