びて早朝とは別な輝きです。ここの群落は、天然記念物に指定されていて、その規模は尾瀬より大きいそ
うです。しかし印象はずいぶんちがいます。
むこうは人里離れた山奥です。そして、透明な水をたたえ、目をさえぎるもののない湿原で、ここそこ
に散らばる白い花のかたまりが一望できます。こちらは、漁師さんたちの生活の場である網走湖と鉄道線
路の間の、湿った森の中で、短い木道付近以外は花がよく見えません。木立の合間から、奥に広がる大き
な群落が覗えるのですが、近づけないのです。あけっぴろげで陽気な少女と、袂で顔を隠したがる陰のあ
る娘、のような。
木々の間から仄見える白く光るお花畑も風情はありますが、傍に行けないもどかしいさが残ります。そ
れと、よどんだ水に浮かぶ空き缶やペットボトルが気になります。昨年秋わたしたちが学校に避難した大
型低気圧で、湖畔に水があふれました。そのとき温泉旅館や道路のゴミがさらわれ、ここに残ったのかも
しれません。ご他聞にもれず大空町(女満別町と藻琴町が合併した新しい町)も苦しい財政で、整備がまま
ならないのでしょう。網走市の呼人地区まで続く長い林道も、木道近くで閉鎖されていました。
越谷市のような首都近辺の豊かな自治体に、これだけの湖畔と真っ白な水芭蕉の大群落があったら、大
金をかけてきれいに整備して、たくさんの人が押しかけるでしょうに。個人でも自治体でも、カネのない
のはつらい、ってことですね。