網走夜景 民営化の危険な道

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 8日に泊まっていた網走駅前のビジネスホテルで5階から見た網走川沿岸の夜景です。


 Wowowで録画しておいた、旅番の『レールウエイ・ストーリー』と社会ドキュメンタリーの『ザ・コー

ポレーション』を続けて見ました。ノルウエーは鉄道が公営で、アメリカも大陸横断鉄道は準国営になっ

たそうです。新自由主義の旗頭のように言われるこの国でも、民営化一辺倒ではないのですね。アメリ

の人口に対する公務員の比率は、日本の2倍以上です。

 『ザ・コーポレーション』は、企業(会社)が環境、法律、従業員のくらし、消費者の利益を犠牲にし

て、利益と市場拡大を追及する、非情な人格をもつ組織だ、という視点で作られています。その主張をす

べて鵜呑みにするつもりはありませんが、確かに民間企業と公共事業体では基本の目的がちがいます。

 わたしはかつて塾を有限会社にしたことがあります。そのとき、定款作成に協力してもらった司法書士

から、事業の目的を収益にしないと登記できないと言われ、法律的には収益追及の法人が会社なのだと、

はじめて知りました。公共事業体の目的は、住民の利益だったり、雇用の確保だったりして、儲けること

ではありません。ですから、同じ効率化という言葉を使うとしても、意味がちがうはずです。

 コストを最小化して利益を最大化するのが企業にとっての効率化です。民営バスが乳母車や車椅子のス

ペースを確保することは効率化に反します。公共事業であれば、母子や老人・障害者の利便性も損なわず

に、削減可能なコストは削減するのが効率化です。少ない設備投資と人員でたくさん乗客を運べば料金を

安くしても儲かりますから、両者が競合すれば、公営バスは民営に客を奪われ、独立採算はできなくなり

ます。

 ここで政治の出番です。投票者の社会的互助精神に訴えて合意を得て、公的な助成あるいは民営バス利

用者への課税などで、公営事業を護ることもできます。その際、削減できるコストはすべて削減している

こと、公共事業体としての効率性は最大限実現していることが、有権者に見えるように、経営を透明化し

ないと合意を得にくくなります。

 ここ数年さまざまに考えて、時代遅れと思われるでしょうが、わたしは「大きな政府」に賛同する気に

なりました。「小さな政府」とどっちがいいか迷ったのは、中央・地方政府や公営事業に見られる、組織

の腐敗、権威主義、馴れ合いによる無駄な支出が気になったからです。でも最近、それは民間企業も同じ

だと思うようになりました。

 財閥、世襲オーナー、大企業経営陣の世界で、人事が経営能力を基準に合理的に行われているとは限ら

ない。派閥争いや身内・閨閥の都合が優先され、経営効率化が妨げられていることも多いようだ。抵抗

できない立場の労働者や消費者に対してだけ、彼らは非情な効率優先を容赦なく貫く。民営化して入札で

価格を下げれば、公共企業では非難される過酷な賃金・待遇やユーザー軽視も、見過ごされやすい。世襲

議員が増えた。各界の頂点に上り詰める人のなかで、豊かな家庭の出身者が多くなっている。トップ官

僚、学界・法曹界の実力者、政党の有力者は、ビジネス界の上層と重なり合う人脈を多くもっている。彼

らは、しわ寄せを受ける下層労働者や貧しい住民とは、ちがう生活をしている。この層が自分たちの自由

にできる財を増やすため、民営化を推進している、そう思うようになりました。

 住民のくらしに深く関わる分野の民営化は危険です。『ザ・コーポレーション』にあったように、政府

には選挙を通じて参加する道はありますが、民間企業に対してはこの道は閉ざされていますから。それに

何より、教育、環境、大災害への備え、国内および世界の格差拡大への歯止めなど、目先の利益を最重視

する効率主義で対処してはならない問題が、山積しています。